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2026年2月15日日曜日

【宮古木曜会合唱団】開始2時間後は良い響き(でも,表現したいことは…?)


 2月15日(日)の午後,宮古市の磯鶏幼稚園のホールで宮古木曜会合唱団の強化練習がありました。3月29日(日)の本番となる第43回定期演奏会まであと1ヶ月,私の練習回数も今回と2月26日(木)の通常練習,3月15日(日)の強化練習,3月19日(木)の通常練習と残す所4回となりました。この日は日曜日でもあってほぼフルメンバーが参加してくれました。宮古はとても温かく,3月あるいは4月のような穏やかな空気でした。

 開始から2時間は第3部《島よ》の練習でしたが,その後の1時間をもらって第1部『ヨーロッパ音楽の愉しみ』のステージの楽曲に取り組みました。まずは日本語からと考え《緑の森》,続いてギター伴奏の付くシューベルト作曲の《子守唄》,続けてフリース(モーツァルト)作曲の《子守唄》,最後にビクトリアの《O magnum mysterium》を通しました。《El noi de la mare》だけは音を出せませんでしたが,どの曲も思ったよりは良い感じでしたので安心しました。

 基本的に声がよく鳴っていて溶け合っていました。テノール6名,バス5名と全体の半数が男声がで厚かったからかもしれません。また前半の2時間の《島よ》練習で声をたくさん出していたことが「発声的には」よかったのだと思います。木曜日の通常練習は1回2時間(19時から21時)しかありませんから,十分に「身体という楽器」が鳴らないうちに終わってしまいます。4時間の強化練習の中間の時間を割りふってもらってとても助かりました!

 前半の2時間聞かせてもらった《島よ》。宮古高校音楽部の生徒さんや「「島よ」を歌う会」として参加の方もいらっしゃって,よく声は出ていましたが(高音で身体を使えていないところは気になりました),言葉や音楽の奥にある世界が聞こえてこないのは残念です。先日,昨年11月に放映されたNHK総合テレビの番組「あさイチ」のプレミアムトークのコーナーに指揮者の山田和樹さんが出ている番組を録画で観ました。司会者の華丸・大吉さんらが「指揮者が違うと音楽が変わるんですか?」と疑問を呈していましたが,逆に考えると,同じ譜面を見て正しい音を出していればだれがやっても同じ演奏になるはず,と考えていたのではないでしょうか。これはおそらく多くの方が小学校での音楽教育によって学んだ(染みつけられた)ものと思います。歌でも器楽でも音符通りに「正しく」音を出すことをゴールに指導され,「正しい」かどうかテストで測られ評価される。そんな音楽授業のルーティーンが繰り返されることで「同じ譜面を見て正しい音を出していればだれがやっても同じ演奏になるはず」的な発想が生まれるのではないか,とその時思いました。合唱も同じこと。正しく音をとって歌っていれば正しい演奏になると思って声を出しまくっていては『音楽』にはなりません。楽譜なんて音楽の骨組しか伝えていない(伝えられない)メディアだと思います。その骨組から何を読み取ってどのように肉付けするのか,作詞者,作曲者が何を表現したかったのか,それを考えて音にしていくことではじめて音が『音楽』になっていくのだと思います。そしてその読み取り方に演奏者の個性が表れるのです。正解はありませんから。

 この言葉はどんな心境から出てくるのか,この旋律は何を思って作曲されているのか,このリズムは…と各自が意識的に楽譜にあたり読み解くことなく指揮者に言われた通りに音を出しているだけでは,聴き手の心に響く音楽にはならないと思っています。残されたあと数回の練習ですが,丁寧に楽譜に向き合い,表現したいことを表すための手段身に付け(力量高め)ながら本番でのより良い演奏を実現しましょう。

2026年2月11日水曜日

【グルッペ・ベッヒライン】「小野寺貴子さんによる公開レッスン」のご案内

 2月14日(土)と15日(日)に「小野寺貴子さんによる公開レッスン」が盛岡市で開催されます。

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2月14日(土)10:00〜17:00,6人(1レッスン45分間)
2月15日(日)12:30〜16:00,4人(1レッスン45分間)
会場:岩手県公会堂 21号室
聴講料:各日1000円
主催:グルッペ・ベッヒライン
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 小野寺貴子さんは岩手大学で学んだ後,東京藝術大学に進み,その後ドイツで活躍している現役の声楽家(メゾ・ソプラノ)です。とても明るく前向きなキャラクター&アドヴァイスで,盛岡バッハ・カンタータ・フェラインの仲間でもあります(昨日の通常練習にも久しぶりに参加していらっしゃいました)。2024年に盛岡バッハ・カンタータ・フェラインがライプツィヒのバッハフェストに招聘された際にも通訳などたくさんおせわになりましたし,2013年8月のドイツ演奏旅行でロストックを訪れた際にもたくさん面倒を見ていただきました。

 今回のレッスン生はソプラノ6名,メゾ・ソプラノ3名,テノール1名の計10名です。ドイツ歌曲,イタリア歌曲,オペラアリア,カンタータのアリアなど様々な曲種が歌われます。(詳しい楽曲は写真をご覧ください。)

 主催する「グルッペ・ベッヒライン」という団体は盛岡を拠点にしている音楽グループです。いずれもドイツ語で「グルッペ Gruppe」は「グループ」,「ベッヒライン Bächlein」は「バッハちゃん・小川」という意味で,バッハを中心とした音楽を真摯に学び合うことを目的に1988年(頃)に設立された音楽愛好家グループです(会長は小原一穂さん)。コロナ禍前は1年半から1年の間隔で演奏会を開催していて,私も1990年にモンテヴェルディ"Vespro della Beata Vergine",1996年にバッハBWV18,2011年にメンデルスゾーンop.69,2014年にモーツアルトKV.49を指揮して出演したり,2017年にはStefanie Smits先生の公開レッスンを受講したりしてたくさん学ばせていただいている場です。

 質の高い,本場ヨーロッパの「音楽」を学ぶよい機会と思います。お時間のある方は足をお運びください。(ちなみに私は14日午後は合唱音楽研究会奥州の活動が,15日午後は宮古木曜会合唱団の強化練習がすでに入っていました…残念。)

2025年9月25日木曜日

【出前授業③】どんどん変わる!楽しい45分間

 9月25日(木)の午前中,宮古市の某小学校で出前授業をやってきました。今年3回目で最後となります(1回目の様子はこちら2回目の様子はこちら)。対象は4年生の90名弱で体育館での授業でした。11月には連合音楽会(昨年の様子はこちら。今年も行く予定です),そして学習発表会で演奏する曲の1つ,《この歌を》という曲でした。担当の先生は宮古勤務時代の大先輩,サポートで入っているようですが,音楽指導のサポートもバリバリやっているようでした。

 まず聴かせてもらったら,よく喉の開いた美しい声!2部合唱もだいたいできていました。そこで例によって「今日は何をする?」と問いかけると「合唱練習」との答え。なるほど。そこで「何をポイントに練習する?」と聞き返すと,声のことや言葉のことなど様々な点が挙げられました。自分たちの演奏を評する観点をしっかりもつように育てられた子どもたちでした。そこで視点をとりあえず「言葉を力強く」として始めました。ちなみに言語化が多様にできる子どもたちでした。問いかけるとそれぞれの言葉で呟き発信してきます。のびのびと,そしてよく育てられている感じがしました。

 長い音符の支え,休符のまたぎ方(超え方)など,言葉や文の視点でアドバイスすると,それまで以上にしっかりとした声で音楽をグングン進めるようになってきました。部分部分の歌い方も言葉から考えさせると音楽が変わっていきます。途中でリズムの誤りや音の誤りを修正したときも,すぐに誤りに気づいて直っていきました。(ただし,楽譜は見ていないとのことでしたので,4年生なら読譜とも関わらせた指導にするためにも楽譜は見せておきたいところですね。)

 45分間はあっという間でした。「もう時間だからここまでにするけど」と口にした途端,「ええ?」と驚きの反応でした。皆,集中して取り組んでいたのですね。楽しい時間でした。

 かつては合唱委員会があり全校のための合唱活動が行われいていました。その後は合唱クラブとなり好きな子どもたちが集まって活動しコンクールなどにも出ていました。今は特設クラブ扱いで11月の文化祭に向けて2学期になって募集をかけ十数名の希望者がいたとのことでした。ですから全員が参加する学年取組は貴重な機会です。音楽や合唱の良さや楽しさを体験させ,この先の暮らしの糧にしてほしいなぁと思いました。11月の連合音楽会が楽しみになりました。

2025年9月17日水曜日

【出前講座②】子どもって素直!

 9月17日(水)の午前中,盛岡市の某小学校で「出前講座」をやってきました(今年の1回目は遠野市でした)。久しぶりに入った小学校の校庭そして校舎,「小学校ってこんな感じだったなぁ」と懐かしく感じたことが不思議でした。

 朝方に雨が強く振ったので体育館での指導だと大変だなぁと思って伺ったのですが,家を出る頃には雨は上がりました。授業は体育館ではなく音楽室で予定されていました。というのも,この学校はかつては大規模校で有名でしたが,今は児童数は全校で百数十人と1学年1〜2学級の規模になっていたので,3・4年合同授業,5・6年合同授業の2コマはいずれも音楽室に収まる人数となっていたからです。

 今回の楽曲は,創立の周年行事で全校で歌うために作られた曲とのことでした。作詞は在校生と昨年までの校長先生,作曲はこの小学校出身で在京のプロのミュージシャンによるものです。周年行事では全校で歌うのですが3・4年生は市の音楽会でも披露するためもあって別々の授業に設定されていました。

 はじめは3・4年生でした。とても元気な4年生とその雰囲気に押されておとなしい3年生の組み合わせです。始業のご挨拶がいつ始まるか…と思うほどの雰囲気で始まった授業,始めに一通り歌って聞かせてもらいました。その上で「この時間は何を勉強したい?」と学習課題を皆で考えると,「声のだし方」「歌い方」「山場」といったキーワードがでてきたので,そのあたりを使って授業を進めることにしました。音が高くなるに連れて喉が閉まっていく傾向は何処も同じでしたので,Es-Durの原曲をF-Dur,G-Durと上げていきながら,私がファルセットで高い音を出してみせるとすぐに真似をしてくれました。「そのお腹の使い方で,下がってくるよ」と調を戻していくと,喉でなくお腹で頑張る歌い方になっていきました。続いて「歌い方」については,各行の歌い出しがはっきりしていなかったので「次の歌詞を考えながら歌っていこう」と,前のフレーズの最後に「はい次!」「はい次!」と声をかけてやったらすぐに良くなりました。「山場はどこ?」と聞くと「最後のところ」というので,そのに向かって盛り上がっていくんだよ」と一言かけたらその通りにやってくれました。

 集中できない子どもたちが数人いたのですが,その中で手や足でリズムをとっている子が数名いたので,その子たちのノリの良さを取り上げて褒めながら前奏のワクワクする感じのところで皆で手拍子して曲の持つリズム感を共有しました。そうしながら私は子どもたちの中に入って行ってフェルセットで歌ったり,「いいリズムだね」「いい声してる!」「その音程でいいんだよ」と個別に声をかけてみました。すると集中できない子どもたちも少しずつ歌に参加し一緒になって歌に取り組むようになりました。

 次の時間は5・6年生でした。こちらも始めに歌って聞かせてもらいましたが,けっこうしっかり歌えていました。そこで「こんなに歌えるなら,今日はもうやることないね。」と評価してやると,「声のだし方を知りたい」「音程を正しく歌いたい」など課題がでてきたので一通り改善に向けて指導しました。20分後には良くなったので「他には?」と周年行事で歌うことに関連して更なる課題を考えさせました。するとさすが高学年です。「聴きに来た方々に伝わるように歌いたい」「歌詞の意味を考えて歌いたい」と自分たちに足りなかったことが見えてきたようでした。そこでまずは1番の歌詞の中身(学校の周りの風景や様子など)を具体的にイメージさせました。そうして歌ってみたら歌がとても豊かな感じになりました。残り時間が少なかったのでそのまま2番(学校の行事や諸活動の様子)を歌ったのですが,明らかにイメージ不足でした。そこで「この歌は君たちにしか歌えない歌。(1番の)学校の周りの様子なら近所の人はわかるけれど,学校の行事や活動で君たちが何を感じているかは君たちにしかわからない。だからそれをしっかりと想って,聞いた人に伝わるように表現しようとしなくちゃ意味がないんだよ。」と伝えて2番を再び歌ってもらいました。するとさっきとはガラリと変わってとても丁寧な音楽とさらに真剣さを増した表情が現れました。

 子どもってほんとうに素直です!指導の言葉を真剣に捉えて考えて行動に移そうとするので,ぐんぐん変化していきます!「やわらかい」というか「しなやか」というか,大人でもそうありたいものですね。帰宅したら疲れがどっと出ました。夜にはアンサンブル・コンフオーコのレッスンに行かなければならないので,一休みしてエネルギーを蓄えました。

2025年7月2日水曜日

【出前講座①】真似が上手な「小学生」からどう引き出すか

  7月1日(火),午後には盛岡某高音楽部,夜にはMBKVの通常練習を控えた午前中に,遠野市の(昨年とは違う)某小学校で,昨年同様の「出前講座」の音楽授業をやってきました。3年生から6年生まで全部で30名ほどを相手に松長誠作詞・作曲の《きっと明日は晴れる》という曲を使っての歌唱の学習です。今回は音楽室でした。

 事前に「発声が悪くて高い音が歌えないのが課題」とNR校長先生から言われていたのですが,最初に一通り聴かせてもらい高い音もそれなりに工夫して歌えていたので,急遽方針を練り直しました。また全体に歌う意欲は高く,特に3年生は反応も良い感じでした。

 はじめ,山場となっている部分の旋律を使って,調をヘ長調からト長調に上げて伴奏しながらうたわせたのですが,自分の準備が悪く自在にピアノ伴奏をすることができませんでした。そこで諦めて「真似させ作戦」に移りました。私が児童の音域まで上げて歌うことで高い声の使い方を真似させてようとしたのです。真似が上手が「小学生」ですから,私の変な声に少しくすくすしましたが,すぐに(特に3年生が)真似してくれて,喉を開いたまま高音を出すことをクリアしていきました。身につくには時間がかかるので音域が低くなると元のように喉が狭くなってしまうのですが,それでも良い感じを掴んでくれたので,それでじゃんじゃん歌わせました。

 途中で,難しい歌詞の部分の意味を確認したり(意外に意味が難しいのです),フレーズごとに場面が違うことを歌詞の面から理解させ,音楽の変化にも気づかせたりしながら,何度も歌ってみました。

 授業の始めに「声を大きく出せるようになりたい」とか「良い声で歌えるようになりたい」といったことを子どもたちが課題に選んだので,終わってからその達成具合を尋ねると,ほとんどの児童が,自分や周りの声が良い方に変わったと感じていました。

 終了後に担当の先生と1コマ分の時間を使って指導について話し合いました。さまざまなことに悩んでいるようでしたので,「私ならこう考える」ということをいろいろと話してきました。秋に開かれる連合音楽会をなにか特別な姿を見せる場と思い込んでいるようでしたので,「音楽会だって学習の一つなのだから,どんな力(特に音楽的な力)を伸ばしたいのかというねらいを明確にして,そうすれば選曲のことも表情のことも学習の進め方のことも方針がつかめると思いますよ。」とお話してきました。また,特に伴奏法に興味をもってもらえました。時間がなかったので教えることまではできませんでしたが,コード伴奏の仕組みや機能和声,移調の仕方などについて紹介してきました。

 音楽を苦手と感じている小学校の教員は結構多く,その苦手意識がマイナスな考え方(「立派に声を出していれば間違いない。」「間違えないで歌えていればよい。」など)に繋がっていく場面を現職時代によく見ました。若い先生にはそういう風に捉えるのではなく,音楽の本質をもっとよく掴んでほしい,そのためのお手伝いができたらな,と思った時間でした。

2024年11月10日日曜日

【宮古市連合音楽会】小学生の可能性は無限大!

  11月8日(金)に宮古市民文化会館で宮古市連合音楽会の小学校の部を,じっくり集中して聴いてきました。というのは講師を頼まれたからです。講師として主にやることは①各校へのアドバイスを書く、②閉会行事で会場の全員に「講評」を話す、といったことです。そのためには伝える内容や表現を考えながら集中して聴かなければなりません。

 午前中に8校、午後は7校の計15校が出場しました。山田町からも来ていました。田野畑村からは(前日実施の中学校の部には来ていたようですが)参加はありませんでした。もちろん10月に出前講座③でおじゃました学校も出場していました。

 多くの学校が3・4年生で合唱2曲という構成で,合奏を取り入れているところは少なく数曲だけでした。いずれの学校の子どもたちも一生懸命に歌っています。この日までたくさん学習に取り組んできたのでしょうね。「連合音楽会のステージに立つ」という経験は子どもたちの生涯においてとても意義のある経験だと感じます。

 演奏について。合唱はほとんどの演奏で同じ傾向でした。それは「最高音で声が変わって響きが伸び,低い方では会話発声になっていてハモらない」という傾向です。そこで「上の響きが良いので,それを下の音域でも使えるようになると2部合唱が溶け合いますよ。」とアドバイスしました。「ハモるためには音程の正確さだけではうまくいきません。溶け合う音質(声質)も関係しています」と。


 合奏では多くのパートがある中,自分のパートをしっかりと覚えて演奏していました。こちらも「自分のパートはしっかり覚えて間違えずに音を出していて,それを合わせている。」という傾向です。そこで「①自分のパートの音高とリズムだけでなく『音質』も吟味してみましょう。」とアドバイスしました。また「他のパートが何をやっているか聴いて感じてみましょう。」と。一つの音楽世界をステージに(会場に)つくるわけですから,自分の音は全体の中のどこにどんなふうにはまるとよりよくなるのか,と考えることができるようになると合奏(音楽)をより楽しめます…そしてそれは学級での暮らしや身の回りの人との人間関係にも言えることなのです!

 久しぶりに大勢の小学生の前に立ち,また大勢の小学生の活動・頑張っている様子を目にして,「小学生の可能性は無限大だ!」とあらためて感じました。日々接していると見えなくなることが多いのですが。今後の小学校生活はもちろん,これからの長い人生で音楽に親しんでいってほしい,そのための環境を作ることが年寄りの仕事だ,と思いました。先生方の日々のご努力に敬意を評します!

2024年10月17日木曜日

【出前講座②③】「変わった!」かな?

  出前講座の(1回目は9月11日でした)2回目と3回目に行ってきました。

 2回目となったのは10月16日(水)の午前中,金ヶ崎町の某小学校でした。初めて金ケ崎駅で降りて小雨の中歩いて行ったのですが,金ケ崎駅の立派なこと!財力のある自治体は違いますね。駅舎でコンサートもやるそうですから!

 4年生2学級の合同の学年音楽(60分)で,翌週に予定されている連合音楽会と学習発表会で歌う《エール!!》(美鈴こゆき作詞・作曲)を使っての学習でした(体育館)。「声が大きいけれど怒鳴り声で…」と担当の先生がおっしゃっていた通り!そこで皆で歌える歌を考えてもらって《翼をください》を歌ってみることにしました。というのも《エール!!》のようなテンポが早く弾む音楽では発声について考えたりチャレンジしたりすることは難しいからです。例によって《翼をください》の調を上げていって,高い音が苦しくなったところで頭声的に出して声が伸びている児童を取り上げてお手本にさせながら調を下げていく方法で声質の変化を求めました。十分ではなかったものの全体的に変化が出てきた感じだったので,《エール!!》に切り替えて歌ってみました。「だれかを元気付ける歌だ」と歌詞内容を振り返らせながら歌っていると,児童から「優しい声になった」との言葉が出たので,キーワードを「優しい声」にしてイメージさせていきました。終了後,聞いていた大人からは「1時間で大きく変わって,歌詞の内容も聞き取れるようになった」と評価されましたが,自分としては今回は十分には変えきれなかったと感じています。


 3回目となったのは翌日の10月17日(木)の午後,宮古市の某小学校でした。午後の5校時(45分)は3年生23名と4年生30名の合同合唱,6校時(45分)は5年生25名と6年生27名の合同合唱でした。

 3,4年生は《しあわせになあれ》(弓削田健介作詞・作曲)と《今日から明日へ》(中里幸弘作詞作曲)でした。最初に通して聞かせてもらって驚いたのは,3,4年生ながら喉がよく開いた頭声的に響いた声で歌っていること,そして「喉のパイプを太く保って…」などの用語を使えることでした。とてもきれいなハーモニーができている部分があったので,そこを取り上げながら,うまくハモれていないところの音を確かめて「しあわせになぁれ〜」と丁寧に祈らせたら・・・とても素敵な合唱になりました。

 5,6年生は《歌が息をする》(渡瀬昌治作詞,高橋晴美作曲)でした。こちらも声についてはほとんど問題ありません!高学年らしく(?)サンバのリズムへの乗りが悪かったので,リズムマシーンで16ビートのサンバのリズムを聞かせたり体でリズムに乗って動いてみたりさせながら歌わせたら,表情がどんどんほぐれ,声も明るくなっていきました。

 聞いていた大人の方は終わってから「1時間でこんなに変わるなんて驚きました」と評価してくれました。中には「教育を感じました」と言っていた方もいました。「指示してやらせる」のではなく「その気にさせて引き出す」ことを指していってくださったように思いました。


 小学生の音楽指導は楽しいものです。音楽も表情もどんどん変わっていきます。素直なので真似するのが上手です。今年は「出前講座」はこれで終わりですが,来年もいろいろな機会があったらいいなと思っています!関係者の方,ぜひ申請して使ってください!

2024年9月12日木曜日

【出前講座①】久しぶりの小学生,楽しかった!

  9月11日(水)の午前中,遠野市の某小学校に「出前講座」のために行ってきました。これは某公益財団法人が主催する事業で,45分1コマを使い自分が授業者となるものです。「音楽全般」ということで登録されているのですが,今回は全校合唱の指導,市の音楽会で演奏する『大切なもの』と『エール!!』の2曲でした。

 全校児童30名強の小規模校,体育館での授業でした。かつて岩泉町で5年間勤めた釜津田小学校を思い出し,わくわくしました。

 初めに校長先生の指揮(指揮担当の先生がお休みだった…)で2曲を聴かせてもらいました。どの子も一生懸命歌っていました。大きな声ではっきりです!「よりよくするには…」と考えながら聴いていたのですが,やはり地声を歌声にしないと2部合唱のハーモニーができないし,高音域がつまって苦しいだろうし,なにより美しくないと感じました。

 初めに「今日のこの1時間で何ができるようになりたい?どう変わりたい?」と学習課題を考えさせました(先日の小学校の合唱クラブ指導ではここを飛ばしたのが失敗でした)。出た意見は2つ,①高い音の声を良くしたい,②二部合唱のところをハモらせたい。自分たちの課題を十分にわかっているんだなぁ,良い耳・感覚を持っているなぁ,と思いました。で,「①ができると②もうまくいくから,①からやってみよう。」と見通しを示してから始めました。

 ステージから下ろしてピアノの周りに集め,比較的レガートな旋律の『大切なもの』の冒頭のユニゾン部分を歌わせました。この部分は音域がとても低いので,頭声的な発声の方向には向きません。そこでC-dur(原調)→D-dur→E-dur→F-dur→G-durと移調しながら(簡易)伴奏を弾いてやり,高い音域の発声に挑戦させました。すると高学年児童のほうからとてもよい響きが聞こえてきました。そこで上学年と下学年とに分けて,下学年児童に上学年児童の歌を聴かせました。すると下学年の児童から「すごい!」「きれい!」という反応!このあたりが楽しいのです!

 「真似が上手な人は音楽も体育もどんな学習も上手くなるんだよ」と教え,真似て一緒に歌わせました。今度は上学年児童に「どうだった?」と問いかけると「低学年の声は聞こえなかった」との反応でした。一生懸命真似して歌っていたのに聞こえない,ってことはつまり「一つになってたからなんだね!」と教えてやりました。子どもたちはなんだか嬉しそうな表情,これを見られるのも楽しいのです!

 あとは調を少しずつ下げて原調にして,ステージに戻して歌わせ,ここからは二部合唱の部分の低音部(全体の1/4くらいしかいないんです…私なら多めにするんだけど)の音程を整理して自信を持たせて合わせるだけです。声が澄んできたので,歌っていても他パートが聞こえやすくなって,二部合唱のハモリもできてきたところで時間切れのチャイムが鳴り,振り返りの時間をとることができず残念でした。

 音楽が変わった時の子どもたちの反応,久しぶりでとても楽しい時間でした。次は10月16日(水)に金ケ崎町(この日はそのままコンフオーコへ),翌17日に宮古市(この日はそのまま宮古木曜会合唱団へ)に行く予定です。久しぶりの授業で心配していましたが,とても楽しみになってきました!

2024年4月20日土曜日

【ZホールF合唱団】④移動ド唱法を体験していただきました

  4月20日(土)の午後,ZホールF合唱団の4回目の練習会がありました。場所は展示室。前半の学習会②の人数を数えなかったのは失敗でしたが,最終的には80名くらいは集まったように思います。

 前半の学習会②。前回の訂正から始めました。「楽譜は5線ではなくて,11線でした!」と。ト音譜表とへ音譜表がつながっていることを理解してもらうことが必要だと考えたからです。そのために,前日夜の12時までかかって大譜表の指導用の掲示物(紙板書)を作成して持ち込みました。そして授業でやっていたように,

  • 音符が「線と線の間にあるか,線の上に乗っているか」の識別
  • 「幾つ上」「幾つ下」と数える方法
  • 長調の音階「ド,レ,…」の上がりと下がりのくち慣れ
  • 階名(ハ長調)の識別
といった風に進めました。その後,鍵盤の紙板書(これは今朝までかかりました)と【階名物差し】および鍵盤ハーモニカの実演を使って「長調の音階のシステム」について説明して,臨時記号・調号・「○長調」などを説明し,移動ド唱法にチャレンジしてもらいました。

 その勢いで「夏の思い出」の各パートを移動ド唱法で階名唱しながら音取りを進めました。結局,階名唱の段階ではありましたが全パートの全体の音を確かめることができました。やっている間に「○小節がよくわからない」といった声が聞かれました。「わかりたい,歌えるようになりたい」という意欲の表れですね。とても嬉しく思いました。バスは人数が少なかったので,私の周りに来てもらって一緒に歌いながら進めました。

 なぜ面倒な「移動ド唱法」をとりあげたかというと,いくつかの理由がありました。まず,「音を調の中に『位置付け』て覚えてもらう」ためです。これは覚えやすくなるだけでなく,今後のハーモニー感や音楽性に関係してきます。それから「移動ド唱法の良さを体感してもらう」ためです。機能和声の枠内で作られている音楽を理解するには移動ド唱法で音楽を捉えるということは世界では当たり前です(日本の学校の音楽教育だけが,器楽演奏のために(鍵盤に「ドレミ」を書き込むなど)固定ド唱法から抜けられないでいるのです)。そしてこの体験が地域の音楽愛好家の方々を通して広まっていくことを期待していたこともあります。さらに,先日盛岡の某高校音楽部生が移動ド唱法で音取りしたらあっという間に1曲できたことが,今日取り上げて良いかという迷いをなくしてくれました(高校生諸君,ありがとうね)。参加してくださった方々は果敢にチャレンジしてくださって,みるみる慣れていきました。新しいことを学ぼうとする姿勢が素晴らしいです!

 今日は「夏の思い出」の階名唱による4部合唱までできました。次は階名なしで「無意味シラブル」で歌うこと,その後に歌詞で歌うことへとつながっていきます。

 次回はいよいよイタリア語にチャレンジ!オペラの世界を覗いてみましょう(勉強していきます)。楽しみましょう!よろしくお願いします。お待ちしていま〜す。

2024年4月14日日曜日

【ZホールF合唱団】③需要が多かった学習会

  4月13日(土)の9:00から,Zホールの中ホールで8月11日に開催される「福井敬故郷コンサートvol.3」の特設合唱団の3回目の練習を行いました。前回ご了承いただいたように,はじめの1時間は「学習会」タイムとしました。100名ほどの合唱団員のうち9時に集まった方は20名ほどでしたが,学習会タイムの間に40名ほどにまで増えました。

 第1回のテーマは「楽譜の仕組み」でした。五線のこと,段のこと,ソロと合唱の区別などを,スクリーンに示した楽譜を見ながら説明しました。その後,小節番号を書き込む実習にも取り組みました。

 入門者にとって特に難しいのは「段」のようでした。オペラの合唱譜などは,ソロだけの部分は「ソロパート+ピアノの大譜表」なのですが,合唱の部分になるとソリストパートの数も増えるためにいくつもの五線譜が同時進行するようになります(前のページはソロだけで5段の楽譜が,ページをめくるとソリと合唱で1ページ1段で進む,なぁんて部分もあります)。この変化に目を回すようでした。そこで,それは楽譜出版社の都合でそうなっていることや,五線譜の左端の縦線に注目するといいことなどを書くページについて確かめ,音楽の進む順序=小節の順番を確かめ,小節番号を振っていきました。

 計画では,五線と階名の関係まで扱おうと思っていてレジュメもそこまでで1枚にまとめたのですが,時間切れでした。残した分は次回に扱うこととしました。

 同じく指導を担当しているST先生には個別に見て回ってもらって,困っている人のフォローをしてもらい,大変助かりました。

 後半の2時間は前回の復習として「精神歌」は2部合唱,「風の又三郎」は暗譜に取り組み,「乾杯の歌」はいずれも歌詞なしで,第1部分(ユニゾン部)は復習,第1部分は実質の二部合唱,第3部分は4つのパートの各旋律を歌ってみる,ということに取り組みました。

 はじめて実施した学習会の部,以外に参加者が多くて「需要が多いんだなぁ」と感じました。小学校教員の皆様,生涯にわたって音楽を楽しむための資質・能力の一つとして楽譜の基本を理解させることは大切なことです(楽譜が読めないから音楽は苦手,と思っている人は多いようです)。小学校で学ばせるべきことを機を逸することなく学びとらせてくださいね。

 次回は来週4月20日(土)13:30〜16:30Zホールの会議室だったと思います。始めの1時間の学習会はテーマを【旋律の覚え方のコツをつかもう】として移動ド唱法について触れてみようと思っています(準備を入念にしておかなければ!)。1時間でできるかな?多くの方のご参加をお待ちしています。

2024年3月17日日曜日

学年(年齢)が違うと楽器も異なるが,原理は同じ

  3月12日(火),3日後に控えた修了式に向けて4年生約100名がF-Durの校歌の副旋律にチャレンジしていました。だいぶ覚えたけれど,大きな声で歌えない,きれいな声で歌えない…と課題をもって「教えてください」とお願いにきました。自分たちで考えて実行する,これに大きな価値を置いている私としては,とても嬉しく思いました。6年生は卒業式に向けて3学期に入ってからそのような動きを見せていたのですが,下の学年も(良いことを)真似して動き出したのは素晴らしいことです。担任団にも拍手です!

 体育館で聴かせてもらいました。副旋律は音域的に低いので,彼らが思ったような声,いわゆる「きれいな声」が出しづらいのです。彼らは胸から声を出す感じで,喉頭がほとんど開いていませんでした。そこで例によってまずG-Durに上げて歌わせました。以前は移調すると歌えない児童が続出でしたが,今は慣れてきたようで問題なく移調できました。そこで次にA-Durに上げ,さらにB-Durにと上げていきました。当然のどが詰まって…喉を詰めて出そうとします。

 そこで吸気により喉を開けさせてそこにお腹から息を送り込む,というトレーニングをしてチャレンジさせました。恥ずかしがってい照れている児童や笑ってしまっている児童がいたので「声を出すってことは運動なんだよ。どんなスポーツだってよいパフォーマンスの方法を分かって,筋肉を使えるようにトレーニングすることでよく動けるようになる。歌だっておなじでしょ!」と理解を促し,自分の身体を楽器にするという普段やり慣れないヘンテコな運動にきちんと取り組ませました。その上で上げた調で歌わせ,気合を入れて息を送り込ませます。「なんだか声がでたぞ」と思わせました。

 あとはそのまま調を下げていきます。するとだんだん身体をサボらせ始めるので,また「楽器の形を変えない!運動の仕方を変えない!」と気合を入れます。そうしながら元のF-Durまで戻しました。

 この春,4,5,6年生とそれぞれ1〜2時間の授業をしました。この3年間だけでも声質はだいぶ異なります。体の作りが違うんだなぁ,と声を聞かせてもらって実感しました。でも同じ方法で声がガラリと変わりましたから,原理は同じなんだなぁ,とあらためて思いました。音楽科の学習指導として教える最後の貴重な機会をくれた子どもたち,そして担任団に感謝です!だって私自身がたくさん学べたのですから。「ありがとう。」

2024年3月3日日曜日

ポテンシャルを引き出すには,スイッチを入れればよいのです

  3月1日(金),巷では県立高校の卒業式が行われたこの日,久しぶりに音楽の授業をさせてもらいました。卒業学年に呼ばれたのです。6年生は卒業式で「旅立ちの日に」を歌うことを選び,それに向けて児童を中心に練習に取り組んできていました。彼らはリーダーを中心に自分たちの課題を「主旋律の最後の『大ーー空にー』のところのコツが知りたい」「地声を歌声にするためのほうほうを学びたい」「声の質を変えたい」とまとめて私のところに持ってきました。この学年の担任団は児童の力を信頼して,自分たちのことは自分たちに任せる,というスタンスで1年間育ててきています。卒業式の歌の「学習」(うちの職場には「「練習」で終わらないように」と口うるさく言ってきています)についても同じスタンスで見守りながら指導してきていました。

 入学時から知っている,久しぶりに相対した子どもたちは大きく成長していました。まず初めに一通り聴かせてもらいました。2部合唱の各声部の音はほぼとれていて,声も大きく出て,歌詞も迷わず歌えていました。しかし力んで声を出しているので苦しそうだし溶け合い(ハモリ)ません。高い音になるとか細い裏声になってしまっていました。

 自分たちの出来具合に点数をつけさせて自己評価させ,足りない点を言語化することで課題を把握させ,この時間のゴールを確認することで見通しを持たせました。これはどの教科でも使える,学びへの動機付けの方法です。

 まず初めに,声質を変えることの理由を伝えました。弦楽アンサンブルや管楽アンサンブルを例に,似た音色だと聞き分けられないほど溶け合ってハーモニーするという原理です。すんなり納得してもらえました。そして「声も楽器」ととらえさせました。

 変ロ長調で書かれているこの編曲は音域が低いので,この子どもたちの声質を改善する・発声法を変えるには難しいと感じました。そこで,ユニゾンで歌い出す前半の部分を移調してどんどん上げていきました。ハ長調→ニ長調→ヘ長調→ト長調(ホ長調や変ホ長調がないのは伴奏が難しいから)。ト長調だと歌い出しがh音,その部分の最高音が高いg音になります。これまでの発声法では苦しくて当然声が出ません。でも私が出してみせると「可能なんだ」ということが伝わります。そこで「ではどうすれば出るか」と発声法のアドバイスをしました。例の「身体は管楽器」「管を太く感じて」「息を流す」「声は「出す」のではなく,「結果として音が出る」と思え」と。

 このようにして声を出させていても,最初はおかしかったり恥ずかしかったりで,自分の身体と心を解放できません。そこで犬を例に出し,「鳴き声を通して犬の気持ちが伝わるとき,犬は「伝えよう」と思って声の出し方を考えて吠えているか?気持ちが伝わるのは,真にそんな気分になって声が出たとき。だから「伝わるようにしよう」とか「へんだなぁ」なぁんて頭で考えたら気持ちなんて伝わらない。」と,声楽表現の基本の基本の話をしました。するとこの子どもたちはすんなりと理解してくれて,鳴らしたり吠えたりする発声に抵抗なく取り組み真似するようになりました。その声(音)のまま高いト長調の主旋律を(歌詞なしで)歌わせました。すると高い音が頑張らなくてもすっと出たのです。しかしまだか細い。そこで「ケチケチしないでもっともっと息を管に送り込みなさい」とやってみせると,すぐに真似します。すると自分たちが思った以上に大きな音が高音域でも出たのです。驚いていました。そうしたら後は音域が下がってくる時に同じ方法で声を出させる,つまり「楽器を変えない」「楽をさせない」だけ。「歌うってことは運動だからね!」「(出しやすい音域でも)手を抜かない!」「(高音域での息を送り込んで)攻めなさい!」とビシビシとハッパをかけました。

 結果,はじめとは驚くほど変わった豊かな響きと2声部の溶け合いの合唱になりました。授業のはじめと終わりの時間に他用で廊下を通り過ぎた職員が,授業が終わってから「はじめと終わりでは全然違う合唱になっていた!1時間であんなに変わるなんて!」と驚くほどでした。

 子どもにはたくさんの伸び代があります。そのポテンシャルを引き出すには,子どもに自分自身のスイッチを入れさせることです。どうすればスイッチを入れさせることができるのか。そこが教材研究のしどころですね。教材を研究する,それも指導する相手を念頭に置いて研究的に教材を見る。そうしておくことで,教育の(音楽の)現場で結果的に相手にスイッチを入れさせるという結果に行き着くことができます(そううまくいかない場合もありますが)。あと何回もできない「授業」という場を提供してくれた担任団と,呼んでくれた子どもたちに感謝です!楽しい時間でした。

2023年3月2日木曜日

二部合唱の難しさ&ポイント(小学5年生の指導から)

  先日(2/28),小学5年生90名ほどを相手に,二部合唱の指導をしました(実質30分間)。学年の担任団は「主旋律は覚えた。副旋律も覚えた。でも合わせるとつられてしまって合唱にならない。」との課題を感じていました。楽曲は栂野知子作詞・作曲の『明日へつなぐもの』。ユニゾンで歌い出し,サビに入るところから3度音程でほぼ並行して動き,コーダの部分は独立した旋律の「掛け合い」構造になっています。

 授業が始まり,子どもたちと担任団とで今の課題を話し合いながら本時の課題「声の出し方と釣られないで歌う方法を学ぼう」にまとめてバトンタッチされました。

 まず聞かせてもらうと,次の3つを感じました。
①フレーズが短く,その終わりで音楽の張りもなくなる。
②二部になるべきところの音楽がもやもやしている。歌えていない。
③でも,コーダ部分の「掛け合い」の二部合唱はいい感じ!

 そこで,まず,「掛け合い」はできるのに「並行して動く」ところの音が取れず曖昧になってしまうのはなぜか,考えました。「掛け合い」は旋律(音高)のみならず歌詞もリズムも違う2つの旋律から成っているから違いがわかりやすい。一方「並行して動く」ところは歌詞もリズムも同じで音高だけが違います。つまり彼らはリズムの違いは認識しやすいけれど,音高の違いを認識するのは不得手ということ。そのことを伝えると「なるほど〜」といった反応でした。そこで,音の高さを手の位置(高さ)に置き換えて音高を視覚化してみました。ユニゾンから二部合唱に分かれるところ(②のところ)の音高は,主旋律は「ソ→レ(上)→ド(上)ー」と5度上がって2度下がる旋律。一方副旋律は「ソ→ミ→ラー」と3度下がって4度上がる旋律。この動きを手の高さを変えながら歌わせました。それまでの学習で階名称をしたり音の高さを空間的な高さとして捉えたりすることが十分でなかったのか,なかなかうまく捉えられない子どもも結構いました。『風船の階名』を授業のときにいつも張り出しておくだけで違ってくると思うのですがね。

 感覚として掴めてきたであろうころに,次の問題に取り組みました。それは①のことです。息を十分に吸って,それを十分に使って声を出していないので,声量が少なく声の張りもないのです。そこで次のように伝えました。「歌うと言うことは『運動』なのです」と。すると「え?」という反応!食いついてくれました!あとは簡単に腹や喉の筋肉を使う様子を見せて真似させて歌わせました(ユニゾン部分)。音域が低い(B-dur)ので,少しずつ上げて(移調して)伴奏を弾き(C-dur, D-dur, F-dur),高い音を出させました(そしてまた戻っていく)。こうなると体を使わないわけにはいきませんからね。加えて,フレーズが短く歌詞の「単語」ごとの歌い方になっているので,文として歌うことを要求し何度か歌わせて音を保つことにも慣れさせていきました。

 声に張りがでてきたところで,そのまま二部合唱の部分に入っていくと…2つの音が重なって響き合うではありませんか!素敵な二部合唱になってきました。

 「それぞれがしっかりと歌って主張しないと,二部合唱のような響き合いは作れないんだよ。自信がないからといって声を出さずにモニャモニャしていると強いところに引っ張られて行っちゃう。これは実は歌だけでなく,他の学習や生活の場面でも同じこと。主張し合うことで響き合える。主張しないでいると自分の考えと違う方に引っ張られて巻き込まれてしまって,やりたくないと思っていてもやっちゃったりすることになるんだ。」と話しました。

 30分ほどの学習時間はあっという間に過ぎましたが,子どもたちが「自分たちの声が出るようになった!」「二部合唱に聞こえた!」と実感して終えることができました。放課後になって担当していた先生と学習会(反省会)をしたら,「自分も声がでるようになって驚いた」と言ってくれました。自分が変わったことを喜んでもらえるのが嬉しいんです!また機会をくださいね。

2022年12月18日日曜日

音楽鑑賞授業をきっかけに「学び」を深める

  金曜日(12/16)の夕方,職場で音楽鑑賞の授業に関する学習会(勝手に「…倶楽部」と命名し,様々なテーマで時々勝手に開催しています)を行いました。某セクションからの急な(2日前)依頼でしたが,職場全員に呼びかけました。結果,6名の参加となりました。

 「聴いて終わり,感想書いて終わりの授業にならないようにしようね。」と,音楽的な見方・考え方…共通事項の示す観点を持たせることにより音楽の良さがより分析的にわかるということを,大きなステレオセットと大型提示装置の前でお話ししました。

 広めの部屋にある大きなステレオセットでオーケストラ音楽や器楽の演奏,合唱や歌唱を聴かせました。また,大型提示装置ともつないで演奏の様子を見ながら聴くことの良し悪しも検討しました。知っている人が演奏していると身近に感じられる,ってなこともやってみました。なにせ普段はCDラジカセで鑑賞させることが普通になっている方々でしたから。

 ねらいのほうはもちろんですが,聞こえる音楽の違いに「なるほど〜」「全然違う」「体にくる」といった感想が聞かれ,嬉しく思いました。まして,子どもたちにとってはもしかしたら最初で最後のその曲との出会いかもしれません。またその種の音楽に触れる機会が少ないでしょうから,CDラジカセで聴いたものが心に一生残るのかもしれません。ですから,今後にぜひとも生かしてもらいたいと思いました。「やはり生を聴いてみたい」とホールの演奏会に足を運ぶようになってくれればさらに嬉しいですね。


 一旦終わってからがさらに楽しい時間でした。というのも「短調と長調の違いがわからないのです」という若手の声をきっかけに,たくさんのことを学び合えたからです。若者は変なプライドがなくていいですね。わからないことを「わからない」と言えますから。学びはそこから始まります!

 長三和音の響きと短三和音の響きの違い,長三度と短三度の違い,転回しても同じ和音として扱うこと,長音階(「ドレミ…」)と短(「ラシド…」)の違い,主音の位置と音名,コード記号の意味や仕組み…などなど,ピアノの鍵盤を見ながら響きを聴かせながら説明すると一つ一つに「なるほど〜」「わかった!」「そういうことだったんだ!」などなど「眼から鱗」の連続のようでした。(分かってもらえると,とっても嬉しくなります。職業がらでしょうか。)

 音楽そのものは目に見えません。だから文字を通して言語で理解することや,目で見てわかることを得意とする「お勉強のできる」タイプの大学卒業資格を持つような人々(の一部)にとっては,音楽は理解しがたいものでしょう。でも「理解できていることにする」ためにわからないことを封印する,あるいは自分で勝手に理屈づけをして知的に安定しようとする,そうやって過ごしてきていたのだと思います。

 「すすんで学び 文化のかおり高いまちをつくります」とは某市の市民憲章の一節です。また「学ぶことが…伝統であり未来である」というスローガンを持つほど,「学ぶこと」に価値を置く組織にいます。私たち自身が(前述の若者のように)積極的に学ぼうとすることを通して,新しい世界を拓いていく姿勢をもつことが大切ですね。

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