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2026年5月12日火曜日

移動ド唱法の利点【合唱音楽研究会奥州・番外編】

【合唱音楽研究会奥州の会員の皆様へ】

 なぜ移動ド唱法に拘るのか ー移動ド唱法の利点ー 2026年5月12日

 合唱音楽研究会奥州では合唱活動を「練習」ではなく「活動」と呼んでいます。それは,1回1回の集まりでは歌いながらよりよい合唱演奏・表現を目指していくのですが,より大切なのはその過程で合唱音楽についてより深く&広く,体験的に学んでいくことにあると考えているからです。演奏会ではなく,合唱活動のゴールが1回1回の学びの積み重ねにあるのです(ですから演奏会は開催したことがなく,学びの成果の「発表会」を(第1回第2回)開催してその時々の目標としてきました)

 「体験的に学ぶ」のですから知識として知るだけではありません。歌うことは筋肉運動です。知ったことを自分の身体を使って音楽として実現することを目指したり,実現できた音楽の中に身をおいて楽しんだりする活動の中でしか学べないことがたくさんあります。音楽は生ものですから。

 もし演奏会をゴールと考えているなら,音取りは少しでも早い方が良いでしょう。極端な話,皆で集まっているのですからやるべきことは合わせ練習であって個人の音取りではありません。音取りは各自済ませてから合わせ練習に向かうのが礼儀です(そうでなければお互いに「他のパートの音取りに付き合わされ」て無駄な時間を過ごすことになります)。さらに言うなら,指揮者のレッスンを受けるということは音楽をレッスンしてもらうことであって音とりを進めてもらうことではない,というのは器楽(例えばピアノ)のレッスンを受けたことのある人なら当然の感覚ではないでしょうか。

 しかし合唱音楽研究会奥州の活動の主なねらいは(前述したように)学びにあります。ですから音取りの段階から全体で取り組むようにしてきました。他パートの旋律がわかった上で自分のパートを表現できるようになると音楽が豊かになるので,他パートの音取りにも取り組むことがあるくらいです。そしてその際には徹底して「移動ド唱法」を要求してきました。そこで,以下では移動ド唱法の利点は何かをご説明して,移動ド唱法の意義をご理解いただきたく思います。

【利点1】調性の感覚が育つ
 私たちが取組んでいる楽曲は基本的に調性音楽です。「調」というシステムを前提して作曲家は作っています。ですから作曲家の意図を作品から読み取る(解釈する)には「調」を前提しなければ深く読み取ることはできません。作品で使われている音階や和声からその作品の調性を感じ取ることで,それをベース,あるいはバックグラウンドにするからこそ作品をより深く解釈(デコード)できるのです。見ることができないし掴むこともできない音楽がもっている調という重要なシステムを把握するためには,音に何らかの記名をすることが近道です(おそらく作曲家も音の記名を利用して作曲しているはずです。楽典や和声学を通して)。「音への記名」,その一つが階名であり,音高と記名を同時に表現するのが「階名唱」なのです。ですから,階名唱を繰り返すことで調性内の各音のもつ雰囲気(や役割)が音楽を通してだんだんと身体にしみてくる…と考えています。

【利点2】音程感覚が身に付く
 「コールユーブンゲン」という練習曲集があります。正しくは「Chorübungen」,つまり「合唱練習書」です(Chorは合唱,übungenは練習の複数形)。内容は「2度音程」とか「3度音程」などの感覚を身に付けるための練習(曲?)の集まりです。ですからほぼ無味乾燥でもあります。しかし実際の楽曲を使いながら音程感覚が身に付くとしたら,そしてその結果が合唱になるとしたら,一石二鳥ではありませんか。

【利点3】音とりが早くなる
 前項で述べた「音程感覚」が身に付くと,今出している音高から次の音高を想像(audiate)することが早くなり,結果として音とりが早くなります。さらに段階が進めば,楽譜にある音符を見て音楽を想像(audiate)できるようになります。心の中に音楽が聴こえるようになるとも言えます。

【利点4】他パートとの関係がわかりやすくなる
 合唱ではハーモニーが大切です。ハーモニーを作るには「正しい音高」をただ出しているだけではだめで,各パートの音が溶け合いません。他のパートを聴くことがとても大切です。他のパートをただ聴くだけでなく,他のパートと自分のパートの関係(例えば「同度」や「長3度」や「完全5度」で協和しているとか,「長2度」や「増4度」でぶつかっているとか)がわかってその響きを実現するような音高や声を出さなければ溶け合いません。その際,同時になっている音のそれぞれの階名がわかると何度の音程でどう響けばいいのかが理解しやすくなります。

【利点5】和音やその機能がわかりやすくなる
 同時に鳴っているときの和音は「ドミソ」なのか「ミソシ」なのか,それによってさらに「Ⅰの和音」なのか「Ⅲの和音」なのか,あるいは長三和音なのか短三和音なのか,そしてその時自分が歌っている音が根音なのか第3音なのか…。その時響くべき和音及び音楽が次にどのように進んでいくのかという和音の機能が,階名唱をしていくことで把握しやすくなります。

 もっとあるかも知れませんが,以上5つの利点を挙げてみました。一方難点はなにかというと「目に見えた階名と違うことがあるので,歌いにくい」ということではないでしょうか。実は私たちは調号の付いていないト音譜表の読みに慣れすぎているのです(学校での半端な音楽教育のせいです)。五線譜にはへ音譜表もあります。つける位置が比較的自由なハ音記号を望いたハ音譜表だってあるのですよこちらはご参考までに。ト音譜表を相対化して見ることができるようになれば,音楽の幅がさらに広がります。

 もう一つ付け加えておきたいことがあります。それは音取り音源を聞いて覚えることの問題点です。何度も耳で聴くと旋律は早く覚えることができます。TVやラジオから聞こえてくるコマーシャルソングなどは音取りしなくても覚えて歌えますよね。繰り返し聞かされるからです。でも耳に入ってくる(つまり私たちが聴きとっている)のは音高やリズムだけでなく音質や音楽の質もあります。無意識のうちに音取り音源の音楽が身体に入り込むことにより,楽譜から読み取れる音楽とは違った音楽が身に付いてしまうことが多々あります(さらに言うとア・カペラ合唱などで純正なハーモニーを目指す場合,平均律とは違った音程の感覚が必要になることもあります。平均律に調律されている鍵盤楽器などの音源に耳が慣れて抜けられなくなるのも心配です)。そして作曲家の意図を作品から読み取る(解釈する),つまり楽譜から音楽を読み取る努力をせずに音楽活動に参加することが普通になると,音楽することの創造性が失われ,薄っぺらい表現,浅い楽しみになってしまいます。

 思いつくままに綴ってきましたが,私が移動ド唱法に拘る理由がおわかりいただけたでしょうか。移動ド唱法は慣れないと少々難しいと感じると思いますが,慣れてしまえばほとんどの楽曲でその力を発揮できるようになります。「その力」とはある種の音楽性ですから音楽性が高まるとも言えます。音楽性が高まればより高いレベルで音楽を楽しむことができるようになるはずです。今より少しでも高まることを目指して,活動に取組んで参りましょう!!

※ご意見,ご感想はコメント欄(またはメール)にお願いします。

※※(スマホでは難しいのですが)コンピュータなど広い画面でこのブログをご覧の方は,右側にある「ラベル」の中の「合唱音楽研究会奥州」をクリックすると,これまでの合唱音楽研究会奥州の活動の記録だけを抽出して読むことができるようになります。ご利用ください。ちなみにこのブログは合唱音楽研究会奥州のために始めたものでした!今後ともよろしくお願いします。

2025年7月30日水曜日

小学校合唱クラブレッスン…成長しているゾ

 7月29日(火),ものすごく暑い日の10:00-12:00に宮古市の某小学校の合唱クラブの指導に行ってきました。会場はクーラーの効く普通教室,夏休みに入ったばかりの20名ほどのメンバーが集まりました。

 昨年も指導に来ました。その時はうまく掴めなくて悔んだのを覚えています。今回こそはと久しぶりの小学生にチャレンジしました。

 NHKコンに出場するために,課題曲《あおい天使》と自由曲《空は今》に取り組んでいました。まず初めに一通り聴かせてもらいました。相変わらずのどにかかった声ですがそれぞれのパートをしっかり覚えて歌っていました。最後の部分のロングトーンのハーモニーはとても綺麗に3度でハモっていました。

 バトンタッチしてすぐに尋ねた子どもたちの課題意識としては,もっと大きな声で歌えるようになりたい,ということでしたので,リズムが細かく音の跳躍も多い課題曲ではなくユニゾンの多い自由曲《空は今》からチャレンジすることにしました。「体は管楽器」「管をよく開けて」「息を送ると音が出る」と言いながら上の声を「音」として出すことに慣れさせ,その「音」で旋律を歌わせました。よく喉の開いたやわらかな響きでした。途中で「ア」とか「オ」と母音を指定して「音」を変化させながら全体を歌わせると,喉を開いたまま声を出すことに慣れてきた様子でした。そして歌詞唱へ。さらに大きな音にしたい時には「楽器の形を変えないで,息をたくさん送る」ことにしました。昨年は楽譜と違う歌い方は受け付けなかったのですが,今年はすんなりと真似をしてチャレンジできるように成長していました。

 後半は課題曲。こちらは音符を一生懸命歌っていたので「場面を想像し,気持ちを想像し,表れる(伝わる)ように歌詞を語る」こと,休符で止まらないで長い線で歌うこと,などにチャレンジさせました。

 久しぶりの小学生,しかも合唱クラブという希望者の集まりでのレッスンで,バランスが難しいところでしたが,なんとか2時間進めることができました。かつては宮古市では3校ほどがNコン常連校でしたが,今はここだけ。子ども時代に音楽に浸れる貴重な場を少しでも残していって欲しいと思いました。

2022年12月18日日曜日

音楽鑑賞授業をきっかけに「学び」を深める

  金曜日(12/16)の夕方,職場で音楽鑑賞の授業に関する学習会(勝手に「…倶楽部」と命名し,様々なテーマで時々勝手に開催しています)を行いました。某セクションからの急な(2日前)依頼でしたが,職場全員に呼びかけました。結果,6名の参加となりました。

 「聴いて終わり,感想書いて終わりの授業にならないようにしようね。」と,音楽的な見方・考え方…共通事項の示す観点を持たせることにより音楽の良さがより分析的にわかるということを,大きなステレオセットと大型提示装置の前でお話ししました。

 広めの部屋にある大きなステレオセットでオーケストラ音楽や器楽の演奏,合唱や歌唱を聴かせました。また,大型提示装置ともつないで演奏の様子を見ながら聴くことの良し悪しも検討しました。知っている人が演奏していると身近に感じられる,ってなこともやってみました。なにせ普段はCDラジカセで鑑賞させることが普通になっている方々でしたから。

 ねらいのほうはもちろんですが,聞こえる音楽の違いに「なるほど〜」「全然違う」「体にくる」といった感想が聞かれ,嬉しく思いました。まして,子どもたちにとってはもしかしたら最初で最後のその曲との出会いかもしれません。またその種の音楽に触れる機会が少ないでしょうから,CDラジカセで聴いたものが心に一生残るのかもしれません。ですから,今後にぜひとも生かしてもらいたいと思いました。「やはり生を聴いてみたい」とホールの演奏会に足を運ぶようになってくれればさらに嬉しいですね。


 一旦終わってからがさらに楽しい時間でした。というのも「短調と長調の違いがわからないのです」という若手の声をきっかけに,たくさんのことを学び合えたからです。若者は変なプライドがなくていいですね。わからないことを「わからない」と言えますから。学びはそこから始まります!

 長三和音の響きと短三和音の響きの違い,長三度と短三度の違い,転回しても同じ和音として扱うこと,長音階(「ドレミ…」)と短(「ラシド…」)の違い,主音の位置と音名,コード記号の意味や仕組み…などなど,ピアノの鍵盤を見ながら響きを聴かせながら説明すると一つ一つに「なるほど〜」「わかった!」「そういうことだったんだ!」などなど「眼から鱗」の連続のようでした。(分かってもらえると,とっても嬉しくなります。職業がらでしょうか。)

 音楽そのものは目に見えません。だから文字を通して言語で理解することや,目で見てわかることを得意とする「お勉強のできる」タイプの大学卒業資格を持つような人々(の一部)にとっては,音楽は理解しがたいものでしょう。でも「理解できていることにする」ためにわからないことを封印する,あるいは自分で勝手に理屈づけをして知的に安定しようとする,そうやって過ごしてきていたのだと思います。

 「すすんで学び 文化のかおり高いまちをつくります」とは某市の市民憲章の一節です。また「学ぶことが…伝統であり未来である」というスローガンを持つほど,「学ぶこと」に価値を置く組織にいます。私たち自身が(前述の若者のように)積極的に学ぼうとすることを通して,新しい世界を拓いていく姿勢をもつことが大切ですね。

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