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2026年6月1日月曜日

【日本声楽発声学会例会】発表してきました


 5月31日(日)暑い東京上野の東京藝術大学で開催された日本声楽発声学会第118回例会に参加してきました(プログラムはこちら)。

 今回は初めて発表の機会をいただき,「子供が輝く合唱指導~教育現場における授業と課外クラブの実践を通じて~」を題目に,岩手大学教育学部附属小学校に長くお勤めの後現在は盛岡市立山岸小学校の指導教諭をなさっている小川先生と一緒に発表してきました。発表内容の骨子は,小学校という最前線で子どもたちに声楽に関する指導を行う際に指導者自身の音楽的な学びを大切にしている,というものでした。ここで言う「音楽的な学び」とは学会はもちろんですが,プロの演奏家と一緒に演奏する体験や合唱団での演奏家による指導から学ぶこと,自分が(子どもや大人の)合唱団を指導しながら学んできたことなどを指します。音楽は生ものなので,音楽している現場だからこそ学べること,音楽の現場でなければ学べないことがたくさんあります。そういった諸々のことを,成長過程にある小学生にどのように伝えてきたかという実践報告でした。ほとんど小川先生の実践の報告でした。というのは私の場合は小学生を相手にする場合は1回勝負の出前授業の形式ですし,多くは大人や高校生を対象にしてきたからでした。


 興味深かったのは私たちの次の発表で,陣内直さんによる題目「歌唱教育における階名を使った移動ド唱法の効用と理論について~歌と読譜を音楽的に教えるために~」の発表でした。ここのところ拘って各方面でお話しし取り組んでいる「移動ド唱法」がテーマです!声楽発声学会の視点とはちょっと違ったかもしれませんが(どちらかというと音楽教育学的な視点),質問することができたくさん学ぶことができました。

 今回学んできたことは,いつも通りみなさんにお伝えしながらよりよい音楽を目指していきたいと思っています。

2026年1月9日金曜日

【演奏会・聴いてきました】《トゥーランドット》in 東京文化会館

 1月7日(水),新幹線で日帰りし,東京上野の東京文化会館に《トゥーランドット》を聴きにというか観に行ってきました。


 東京文化会館のホールには実は初めて入りました。テレビでよく見る壁面のモニュメントがとても大きいことがわかりました。私の席は4階の右側(それでも12,000円!)でした。ステージの上手端やオケピットの指揮者あたりから右(シロフォンやドラがあった方)は見えませんでしたが,ステージのおおよそは見ることができました。

 ウクライナ国立歌劇場の引っ越し公演ということで,演者は以下でした。
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指揮:ミコラ・ジャジューラ
演出:マリオ・コラッヂ
トゥーランドット:オクサナ・クラマレヴァ
カラフ:笛田博昭
リユー:テチアナ・ガニナ
ティムール:セルゲイ・マゲラ
(ほか)
管弦楽:ウクライナ国立歌劇場管弦楽団
合唱:ウクライナ国立歌劇場合唱団
舞踊:ウクライナ国立バレエ
児童合唱:杉並児童合唱団
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 指揮のミコラ・ジャジューラさんは2023年の12月に盛岡で開催された「2つの第九」演奏会の際の指揮者でもありました。

 衣装や髪型など所々に日本との混同もあったように感じましたが,宮殿のセットなどは大がかりで,背景の幕を効果的に利用していました。演出面では,合唱(35名ほど)の動きが少なく,動くソリストに意識を集中させるねらいかなと思いました。

 素晴らしい演奏でした。休憩を含めて計3時間をあのテンションで歌い続け最後まで歌い切るパワーは,ソリストだけでなく合唱(しかも35名くらいしかいない!)の方々にも漲っていました。

 今回東京に日帰りで出かけて鑑賞してきたのは,2027年夏の奥州市文化会館Zホールでの《トゥーランドット》公演がいよいよ動き出したからです。この正月に映像(2008年のメトロポリタン歌劇場)を見ながら対訳やスコアを勉強し始めたのですが,一つの演出だけではつかみ切れないと思って,生の上演を鑑賞してきたわけです。ソロと絡む合唱の難しさ,演技上の合唱の役割,合唱に必要なパワーなどなど,たくさんの気づきがありました。今後の勉強や指導に生かしたいと思います。

2025年12月1日月曜日

【日本声楽発声学会】第118回例会:最先端はものすごい!

 11月29日(土),東京の上野にある東京藝術大学音楽学部にて,日本発声声楽学会第117回例会に参加してきました。前回の第116回例会には参加したのですが,夏期研修会には残念ながら参加できませんでしたので半年振りの学びの機会となりました。

 今回の内容は次のようでした。
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A. 研究発表
1) 「日本近代音楽黎明期の日本歌曲研究 山田耕作の肉声の音響分析から声楽発声指導を検討する”からたちの花”」斉田晴仁・斉田正子
2) 「「頭の後を意識して声を出す」発声指導の効果について」森幹男・梅村憲子
B. 学会サロン
C. 特別講演(120分)
・講師:中橋健太郎左衛門
・演題:「日本オペラ界の未来について〜裾野を広げる為に〜」
D. 現役声楽家の演奏とお話(70分)
・講師:高橋薫子(ピアノ:服部容子)
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 研究発表では,いずれの発表でも機械を使って声を分析し,考察していました。斉田さんは残されていた山田耕作のレコードの歌声を分析したり山田耕作の解剖学的知識を前提にしながら,山田耕作がどのように身体を使っていたのかを考察し示していました。森さんは学生をモデルにして「頭の後へ息を回す」などの指導言の効果を音圧比から評価していました。ちなみに「シンガーズ・フォルマントが高まれば音が大きく聞こえるから音圧が上がる,つまり周波数特性が変わることで音圧が上がるのでは?」と初歩的な質問をしたところ,音については「物理量」と「心理量」とは別ものとして扱うので音圧が上がらなくても大きく聞こえることはある,ということを森先生に教えていただきました。

 特別講演では日本のオペラ界の現状をどのようにして改善していったらいいかについて,方向性をスポーツ界から学び,具体的な対策をご自身の実践から示してくださいました。「税金を払う側と税金をもらう側」などお金についても視野に入れていることや,稀少楽器は電子楽器でおき変えてもなんとかなること,歌手にとってオペラを上演することで役柄も含めて暗譜して演じることが重要であることなど,オペラを上演することの価値を再確認することができました。

 最後のソプラノ歌手高橋薫子(たかはしのぶこ)さんの歌は,日本語による歌曲もイタリア語もフランス語も,歌を聴いていて気持ちよくなる感じがしました。低音域と高音域では喉の使い方が変わっているようなのだけれど統一感のある輝かしい響き,そして自由に音と言葉を操る歌!とても刺激になりました。またピアノ伴奏をした服部容子さんも歌と一体となった音楽を表現していました。


 久しぶりに最先端の研究・演奏に触れてたくさん学ぶことができ,刺激されました。今後の活動に活かしていきたいと思っています。

2025年11月3日月曜日

「芸術はエンターテインメントではありません。」…アンドラーシュ・シフさんの言葉

 11月3日,79年前に日本国憲法が公布され,「自由と平和を愛し、文化をすすめる」ことを趣旨とする国民の祝日に定られたこの日,インターネットのニュースを読んでいたら,第63回(2025年)高松宮殿下記念世界文化賞音楽部門で,ピアニストのアンドラーシュ・シフさんが受賞されたとの記事を見つけました。アンドラーシュ・シフさんの演奏はCD(J. S. Bach作曲《フランス組曲》1〜6番,《イタリア協奏曲》F-Dur,LONDON, PQCL-4359/60)と少しのテレビや動画サイトの動画でしか知りませんが,とても丁寧に音楽に向き合う方だな,と思っていました。彼が今回の受賞のインタビューで語った言葉が,とても印象に残りました。

 読んだ記事は2つありました。①産経新聞が書いたYahooニュースの記事②ぶらあぼONLINEの記事です。前者の記事は日本文化の面について語った点を強調しているように感じましたが,印象に残ったのはその点ではありません。音楽や音楽することについての世の中の現状と彼の考え方です。

----- ①の記事より(強調は引用者による)
芸術はエンターテインメントではありません。より深い次元があります。生の音楽を聴くコンサートは学びを経験できます。これは唯一無二の経験です。聴衆が一緒に経験することが大事なのです。音楽は人を結びつけることができます」
「コンクールは消えてしまえばいい。こういうことを言うのは少数派でしょう。音楽はスポーツではありません。芸術なのです。スポーツは速さ、距離などを測ることができますが、芸術は計り知れない要素の集合です。
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----- ②の記事より(強調は引用者による)
「“ショー”も“ビジネス”も、私はどちらの言葉も好きではありません。芸術はエンターテインメントではない。もっと深い次元があると信じています。それは学びであり、生の音楽を聴くという唯一無二の経験を皆でシェアするという面もあります。演奏はその場限りのもので、翌日のコンサートは全く違うものになってしまう。その瞬間にしか存在しないからこそ意味がある。一人でリビングで聴く音楽ともまったく違います。人と共有することが大切なのです」
芸術と社会、政治は切り離すことができません。我々は社会の一部なのです。私は少数派なのかもしれませんが、不正を見たら、それから目をそらすことはできないのです。」
私たちは、やはり歴史から学ばなければなりません。人類の歴史から戦争がなくなったことはありません。しかし、私自身は(音楽で)平和をもたらすことができると信じています
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 ちょうど次の本を取り寄せて読んだ直後でした。(こちらについては,機会があればまとめてみます。)
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・中地雅之編著『声が世界を抱きしめます 谷川俊太郎 詩・音楽・合唱を語る』東京学芸大学出版会2018
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 音楽についてあらためて考えることができた「文化の日」でした。

2025年10月27日月曜日

【演奏会・聴いてきました】N響&ブロムシュテットのブラームス

 10月25日(土)の14:00〜16:00,東京のNHKホールでNHK交響楽団第2047回定期演奏会Cプログラムの2日目を聴いてきました。1週間前にはBプログラムの声楽付き作品でしたが,今回は声楽なしで,いずれもブラームスによる作曲のコンチェルトと交響曲でした。
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ブラームス作曲
1.《ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調》op. 83
 アンコール:ショパン作曲《24の前奏曲》から第8番嬰ヘ長調 op.28-8
2.《交響曲 第3番 へ長調》op. 90
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 ピアニストはノルウェー生まれのレイフ・オヴェ・アンスネスさん(1970年生まれ・男性),指揮はもちろんブロムシュテットさん!1927年生まれの指揮者ブロムシュテットさんの生演奏,しかも今回はブラームスとあって,聴きたくて(そして観たくて)出かけたのでした。(そして皆さん同じ気持ちのようで,終演後はカーテンコールに出てくるブロムシュテットさんに群がっていました…下の写真)

 オーケストラ団員もピアニストもブロムシュテットさんとの共演をとても楽しんでいる様子が,音楽からも演奏している様子からも伝わってきました。特に交響曲の冒頭はブロムシュテットさんの小さいながら鋭い指揮の動きにオーケストラが反応し,圧倒的な全奏で始まりました。またコン・マスの川崎洋平さんは演奏の後半にいくに従って腰を浮かせながら全身で音を出しているかのようでした。

 演奏終了後はコントラバス奏者のお一人がすぐにステージ袖に下がったかと思ったら,大きな花束をもって出てきてブロムシュテットさんに渡すというセレモニーもありました。

 ちなみに今回は2階R席で聴いたのですが,ステージとの距離は思ったほど遠くは感じませんでした。意外にいいかもしれません。

 ブロムシュテットさんは,来シーズンは10月Aプロのブルックナーのみのようです。99歳となっても再来日してN響から音楽を引き出して欲しいと思います。

2025年10月20日月曜日

【演奏会・聴いてきました】N響&ブロムシュテット&スウェーデン放送合唱団


 10月18日(土)18:00からNHKホールでN響の第2046回定期公演を聴いてきました。関心事は,N響はもちろんですが,指揮者のブロムシュテットさん,スウェーデン放送合唱団,そしてそのプログラムでした。出演者の詳細は「プログラム」を参照のこと。

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1. ストラヴィンスキー《詩篇交響曲》
2. メンデルスゾーン《讃歌》交響曲第2番変ロ長調op.52
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 全体としては短いプログラムですが,いずれの楽曲にも合唱が(《讃歌》にはソリストも)付きます。特に《讃歌》は2013年7月に山形交響楽団の本番に乗るチャンスを仕事の関係で逸してしまった楽曲でもありました。テレビでシンフォニーを降っているブロムシュテットさんはよく見るのでが,ブロムシュテットさんが声楽作品をどんな風に演奏するのか聴いてみたくて行ってきました。

 まず驚いたのはプロの合唱団のレベルの高さです。スウェーデン放送合唱団は1パート10名×4パートの計40名でした。男女同じ人数なのにバランスが良い!(ということは,女声はある意味パワフルで男声は女声と溶け合う音質をしているということ),合唱の4パートそれぞれがまとまって一つになっていてしかも4つの楽器パートのように機能していること!(発声の方向性がそろっていてしかも全体の音楽を構成する要素の位置付をわかっているということ),デュナーミクの変化が一糸乱れないこと!(息づかいがそろっているということ),などなどです。これならオーケストラと一体となって音楽をつくることができます。

 ソリストも皆素晴らしい歌を歌っていました。NHKホールの広さを感じさせないパワーでありながら豊かな叙情性を発揮し,しかもアンサンブルの息がぴったりでした。

 そしてそれらをまとめて音楽を方向付ける98歳のブロムシュテットさんのエネルギーと繊細さ!指揮台への移動には歩行器を使うものの,指揮台上の椅子に腰掛けた後の上半身は,機敏で力強く感じられました。

 それにしても"Omnis spiritus laudet Dominum", "Alles was Odem hat, lobet dem Herrn"と同じテキストに行き着くのに,ストラヴィンスキーとメンデルスゾーンで道がこんなにも異なり,それを丁寧に表現する演奏家の皆さんの力量にあらためて感名を受けました。次週は同じくブロムシュテットのブラームスを聴く予定です。楽しみです!

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