2026年9月2日水曜日

【MBKV】音楽に乗せて言葉を伝えるために


 9月1日(火)の夜,盛岡市にある舘坂橋教会での盛岡バッハ・カンタータ・フェラインの通常練習に参加してきました。あと2ヶ月半で演奏会本番を迎えるので本番を想定した練習の時期かと思いきや,筋肉の使い方のトレーニングと音楽のイメージの共有と実現といった徹底的な基本練習でした。もちろん指導は指揮者の佐々木正利先生です。

 この日に取り上げた楽曲はH. Schütz作曲の《Geistlche Chormusik》(1648) op.11から"Unser Wandel ist im Himmel"Nr.22でした。しかも,全部で99小節の作品の54小節から始めて80小節あたりまで,25小節ほどで1時間50分のレッスンが終わりました。

 歌で表現するには声をコントロールすること,これは当たり前のことです。でもこれが本当に難しい!やっているつもりなのにできていないことばかりです。

 まずは子音をドイツ人と同じように明瞭に発すること。発音(音を発する)ためには,日本語話者である自分たちが普段使わない筋肉を,それも相当程度強く使わなくてはいけません。使えるよにならなくてはいけません。そのためには何度も何度も繰り返して筋肉をコントロールできるようになることは必須です。

 言葉のニュアンスを伝え意味を表現するには,声=母音が強すぎてはいけません。「歌う」という動作は基本的に母音に音高を与えて旋律を作ること,と考えがちです。しかし言葉として聞き取らせるには,母音の音量が増したらその分子音の音量も増やさなければバランスがくずれてしまいます。「音」や「声」は聞こえても「言葉」としては聞こえ辛くなります。そこで必要なことは,母音の強さのコントロールです。「声は出すけれども母音は大きくしない」「子音は強めるけれども母音は強めない」「大きな母音ではないけれども音(声)の響きは失わない」といったような難しい声のコントロールを実現するためには,そのための筋肉をコントロールできるようにならなければなりません。

 そして言葉を聞き取らせるには,「言葉のアクセントがあるから強く発音する」とか「ストレスのないシラブルだから音を小さくする」のように音量を変えるのではなく,平らに歌いながら喋りの抑揚をコントロールすることです。

 それらの全ては音楽に乗せて言葉を伝えることのためですから,それを実現する言葉や音楽のイメージのために成されなければなりません

 先日までコンクールに向けて盛岡某高音楽部で日本語の表現にチャレンジしてきたこともあって,この日のレッスンからはとても多くの学びを得ましたし,目指してきた方向に間違いがないとも感じました…もちろん足元にも及びませんが。(東北大会に向けて徹底的な基本練習でさらに磨きをかけよう!)

 演奏会の本番は11月15日(日)14:00から盛岡市民文化ホール(マリオス)大ホールです。器楽アンサンブル(オルガンつき)の伴奏も聴きどころです。ぜひ足をお運びください。チケットのお問い合わせも待ってます!!

2026年8月30日日曜日

【全日本合唱コンクール岩手県大会・参加してきました】一喜一憂しない!!


 8月29日(土),第78回全日本合唱コンクール岩手県大会の高等学校の部が開催され,盛岡某高も出場してきました。一昨年は(私は)久しぶりの参加で銀賞昨年も銀賞で録音を聴いておおいに反省したのでした

 今年の出番は22団体中20番目と終わり近くでした。「多くの方に聴いてもらえる!」と皆で期待して出場しました。結果は金賞(金賞9位中8位)でした。ここ10年は金賞がなく,東北大会への出場は平成30年度を最後になかったようなので,久しぶりのこと。子どもたちはとても喜んでいました。

 聴いてくださった知人たちからは,「品の良い音楽だった」「丁寧でクオリティの高い演奏」「(それまでの外国語の演奏は言葉がまるでわからなかったけれど,)英語も日本語もよく聴こえてきた」「(自由曲について)7月の県合唱祭の時は『長い曲だなぁ』と思ったが,今回はまったくそうは感じなかった」など嬉しいお言葉をいただきました。「もっとパワフルだといいなぁ」という感想も。

 審査員の付けた点数とそれによる勝敗とその結果である賞よりも,音楽を聴いてくださった方々がどのように感じたか,どのように音楽を受け取ったかということのほうが演奏者としては大切だと感じています。一方,審査員の先生方がそれぞれの音楽的な経験を元にして示してくださるアドバイスは貴重です。紙面を通じてのレッスンみたいなものです。今回もたくさんのご評価をいただきました。表現したかったことが伝わっていたこと,表現したつもりが伝わっていなかったこと,考えていなかった視点など,非常に参考になります。(合唱研のみなさん,後で勉強会をしましょう。)

 大切なことは,一喜一憂しないで音楽に真摯に取り組むこと。東北大会の高等学校の部は9月25日(金)に青森市のリンクステーションホール青森(青森市文化会館)で行われます。この先1ヶ月間の半分は定期考査のために部活ができませんが,少ない時間を有効に使って3年生も含めたこのチームでよりよい演奏を目指して練習に取り組みたいと思います。

2026年8月28日金曜日

【Nコン・聴いてきました】制限時間内でドラマを構成する難しさ

 8月26日(水)と27日(木)にトーサイクラシックホール岩手(岩手県民会館)大ホールに「第93回NHK全国学校音楽コンクール岩手県コンクール」を聴きに行ってきました。平日の午前中ながら親御さんらしき方々が結構な人数聴きにきていました。今回の審査員の先生方は作曲家の上田真樹さん,声楽家の佐々木まり子さん,合唱指揮者の谷本喜基さん,声楽家の谷内畝晶子さん,指揮者で山形大学教授の渡辺修身さんの5名でした。

 一日目の午前中は小学校の部と高等学校の部でした。小学校の部には6団体(7校),盛岡市内3団体,滝沢市1,北上市1,九戸村&二戸市で1,そして宮古市1団体が出場していました。かつて自分が関わっていた頃は宮古市だけでも3つは出ていたし北上市からも数校出場していたように記憶しています。少なくなったのは残念です。演奏については,指導の先生によい発声の方向が見えていないのか素材である声がより良く子どもたちから引き出されていなくて残念な団体と,声を磨いた上で課題曲,自由曲のそれぞれでドラマを明確に示している団体とがあったように思いました。

 午後は高等学校の部でした。こちらは小学校に比べると人数が少なめでした。盛岡地区は4校,一関地区から1校,県北から1校が出場していました。やはり声作りがなされていると聴いていて心地よいものです。

 二日目は中学校の部でした。こちらは全部で16団体(19校)が出場していました。時間の関係で昼食休憩前までの10団体しか聴けなかったのですが,やはり身体から声が出ていることを感じさせる音で歌っている演奏には説得力を感じました。その上で音,母音の響き,息づかいなどが揃っていると,楽曲の姿がすっきりと見えて(聴こえて?)きました

 それにしても今年の課題曲はどれも難しい曲だと感じました。「なんでこの歌詞?」「このことばになぜこの音楽?」と,ちょっと聴いたくらいでは腑に落ちない感じです(私の感性の問題か)。どの子もそれらに長い時間向き合って演奏を磨いてきたのだろうなぁと,課題曲の重さを感じました。

 結果は即日Nコンのサイトに出ていました。金賞受賞校は東北大会に出場するようですから,さらに磨きをかけて良い演奏を目指して欲しいと思いました。

 各学校の演奏からたくさんの刺激とヒントを得ることができた二日間でした。

2026年8月25日火曜日

【日本声楽発声学会・夏季研修会】様々な視点が得られました


 8月23日(日)に東京上野の東京藝術大学で開催された日本声楽発声学会の2026夏季研修会(プログラムはこちら)に参加してきました。かつては東京新宿区大久保の日本福音ルーテル東京教会で2日間開催されていました(2023年の様子はこちら)が,今回は1日での開催でした。しかし多様な内容で,自分の音楽活動への様々な視点が得られました。

 A講座は「日本の作曲家シリーズXIV」で三宅悠太さんによる「W. A. Mozart《Ave verum corpus》の芸術性と演奏研究ー作曲の視点からー」と題した講演でした。三宅悠太さんといえば先日某小学校合唱クラブで指導した《どっきん せみさん》の作曲者でもあります。短いながら美しい作品として知られる《Ave verum corpus》を作曲技法の観点から分析し,「だからこう演奏するのもいいのではないか」と演奏法の提案までされていました。作曲についてよく知らない私などは,残された作品はア・プリオリなものとして受け取ってしまうのですが,三宅さんによると「こういう書方が当時は普通だったと思う」とピアノで弾いたり参加者に歌わせたりして経験させ,それとの比較で「でもモーツアルトはこのように書いている!普通はそうは書けない。その意味は…」と旋律の運び方,和音の選択,和音の進め方などなどをテキストとも関連させながら取り上げて説明してくれました。「なるほど,自分が取組んでいる作品でも見直してみよう。」と思ったもののその基本となる和声分析が覚束なく,敢なく断念しました。でも(理解できなくても)感じ取るヒントは得られたように思いました。


 B講座は「音声生理学講座」で高橋純竹田数章さんの「声を『見る』ための音声学・音声生理・音響分析入門」と題した講演でした。音声生理学の復習から音響分析の実演まで幅広く扱っていたので,多くのことの再確認もできました。またその場でスペクトログラムによる音色の解析まで見ることができました。3000Hz前後のシンガーズフォルマントの様子や母音の違いによる周波数特性の違いなど,とてもよくわかりました。

 C講座は特別講演で垣内大樹さんによる「Plant Music」の実演や体験でした。植物内に生じる電位差をトリガーとしてMIDI信号を作成する「植物音楽デバイス」を使って,任意に生成されるMIDI音を音楽ととらえてそれとセッションする,といった感じでしょうか。植物から生成されるMIDI音は音高も強さも長さも全くランダムなので,聞いているとなぜかゆったりとした気分になりました。「キー」はなんとなくあるものの「調性」のようなものはないので,自分の声の音高などを気にすることなく身体から発してセッションすることができました。心地よい体験でした。


 16:40に研修会を終えて向かったのは武蔵小山,目黒の少し西の方です。その商店街アーケードの一角で先日盛岡でコンサートを開催した明和電機による「明和電機 おもちゃができるまで展(ナンセンス発想からものづくり)」を見てきました。コンセプトのノートを手にとって見ることで思考の変遷をたどることができたり,楽器のデモンストレーションを鳴らすには別売りのカードを買う必要があるなど明和電機らしい設定もありました。社長によるサイン会も奥の方で行われており,子どもたちが列をなしていました。会場を視察にきた社長とほんの一言交わすこともできました!

 数日前に知人と「(水沢から見た仙台とか,宮古から見た盛岡とか)都会には文化的なものがたくさんあるね。」と話していたのですが,東京には本当にたくさんの文化的・刺激的なものがあるとあらためて感じました。

2026年8月23日日曜日

【ZホールSP合唱団燻銀08】身体という楽器をよく鳴らして歌いましょう!

 8月22日(土),午前中に合唱音楽研究会奥州の活動を行った午後,奥州市のZホールでZホールスペシャル合唱団の練習がありました。今回は8回目,初めてリハーサル室で練習しました。

 前回は《春・花》と《夏・城ヶ島の雨》を取り上げたので,今回は2周目の後半《秋・村祭り》と《冬・ペチカ》に取り上げました。まずは《秋・村祭り》からです。一度聞かせてもらったものの,お祭りの威勢の良さを表現するには声が貧弱でした。そこでコーダ部の「ドンドンヒャララ…」を使って腹から声を出すことを徹底しました。そうしてから最後の歌詞の部分でやっとハーモニーが聞こえてくるようになりました。次に3番,2番ともどってきてはや一時間が経ち休憩をとりました。後半は続きの1番を,これまで同様に身体を使って歌う練習から始めました。

 次に《冬・ペチカ》を練習しました。合唱冒頭のハミングで積み重なってくるところから練習しました。ハミングの後すぐに「A-」と1小節間歌うのですが,どうもイメージが定まりません。「ハミングの積み重なりは冬の夜に静かに深々と降る雪の重苦しさ」,直後の「A-は家の明かり・家の中の暖かさにホッとするイメージ」と伝え,なんとか共有できたように思いました。難しいものです。続いて中間部の4パートが皆そろうところなのですが,この合唱団はソプラノの人数が矢鱈に多く,アルトとバランスが取れません。聞いてみると案の定アルトを聞いていないことがわかりました。そこでアルトを聴き,かつコンパクトに歌うことをお願いしました。アンサンブルの基本は聞き合うことです。基本を大切にすれば,合唱をどう仕上げるかが自ずと見えてきます。加えて,2名だけだったテノールですが真正面から逃げずにチャレンジを重ねたので,正しくしっかりと歌えるようになりました!

 次回はふたたび1曲目の《春・花》にもどって,繰り返し歌って評価しながらヴァイオリンとセッションする際の合唱のポイントを育てたい…などとハイレベルを求める前に,【合唱の基礎】を身体で覚えてもらおうと思っています。この合唱団に最も必要なものは身体という楽器をよく鳴らして歌うことだと感じています。来年のオペラにもつながることですし,他の合唱団で合唱を楽しむ際にも必要なことですから,身体に染み込ませて常識のレベルを上げていきたいと思いました。あと4回やったら前日リハを迎えます。プロのヴァイオリンと対等にアンサンブルできる合唱団に育てていかなければと思いました。

【合唱音楽研究会奥州75】岩谷堂地区センターは良い響き!

 8月22日(土)の午前中9:30〜12:00に奥州市の岩谷堂地区センター多目的ホールで75回目となる合唱音楽研究会奥州の活動を行いました。岩谷堂地区センターは比較的新しい施設で,「ささらホール」のすぐ隣にあります。今回初めて多目的ホールを活動場所にしてみました。

 今回はピアノ伴奏の千田絵未さんがお休みなので,全編無伴奏での取組みとなりました。初めに《紅葉・冬景色》から始めました。というのは,いつもこれら日本語の曲を後に回すと疲れからか音下がりがひどくなるからです。で今回はというと…やはり初めは下がりました。でも指摘してしつこく取組むうちに改善され気にならなくなりました!また,雑にというか音楽や歌詞へのイメージを明確にしないまま声だけ出すようにして歌っていることが多かったので,丁寧に音楽するように練習しました。

 つづいて《Furusato》でした。テノールの主旋律の歌い方の改善が最重要課題でしたが,まずは3番の皆で歌詞で歌うところから取り上げました。テノールだけではなくどのパートにも共通する課題だと感じたからです。その後2番,1番と前に戻ってくる頃には,テノールの歌い方も安定していました。

 その後《Kyrie》に取組みました。ソリストを紹介し,その方々には最前列に来ていただいて練習しました。ソロを取り上げて2回目になります。どの方も自分の歌にしっかりと向き合ってチャレンジしてくれました。少しずつ歌い慣れてきたようです。

 最後に《Gloria》のソロを入れて1回だけ歌いました。時々歌わないと忘れてしまいますから。ソロの方も初挑戦ながら堂々と歌っていました。

 次回は9月6日(日)14:00〜17:00常盤地区センターですが,なんとアルトの皆さんは早く集まってパート練習をするとのこと!その意欲に刺激されます!9月27日(日)の胆江合唱祭に向けてさらに良い演奏を目指しましょう!

2026年8月20日木曜日

【宮古高校音楽部】素直で意欲的な学びで変わる音楽

 8月19日(水)の午後,宮古高校音楽部のレッスンに行ってきました。同部の外部コーチとしてここ数年,1年に1,2回夏におこなっています。2025年はパレストリーナとメンデルスゾーンという外国語の楽曲(1回目)(2回目)2024年は黒人霊歌と邦人曲でした。

 今回は週末の文化祭に向けた準備で忙しそうな学校の校舎の音楽室で行いました。校舎に着くと,いつも通り生徒さんの代表の子が玄関に立って待っていてくれました。

 今回の楽曲は全日本合唱コンクールに向けた3曲で,課題曲がG4《河》(詩:石原吉郎,曲:福丸光詩),自由曲がBob Chilcott編曲の《Sunayama》と《Mura Matsuri》です。ソプラノ2名,アルト3名,テノール2名,バス3名と,計10名ながらしっかりとした混声合唱に生徒さんによる充実したピアノ伴奏が付きます。羨ましい環境です!

 はじめに3曲を通して聴かせてもらいました。皆暗譜で指揮の先生に集中し一人ひとりがしっかりと声を出して歌っていました。歌詞も音楽も難しい《河》でも感情を込めて歌っているのがわかりました。ですから解釈や表現の意欲についてはそれほど問題ありません。むしろ表現するための「素材」となる声,つまり楽器としての身体の使い方が気になりました。

 いずれも日本語の楽曲ですが,懸命に言葉を喋ろうとしたり大きな音で伝えようとしたりするあまり,身体が堅くなってしまって音楽がでこぼこしていました。そこでまず「楽器作り」の大切さを伝えた上で,①響きの部屋の確保(喉を開く筋肉の自覚),②腹から息を送れば楽器は鳴るという感覚(胸郭を締め付けない),③楽器の保持(母音が変わっても,音高が変わっても「楽器の形を変えない」)ことを,《Sunayama》の主旋律を使ってチャレンジさせました。

 心を込めて一生懸命に歌ってきたのに,急に「力を抜け」だの「お腹を使え」だの「楽器の形を変えない」だのと言われ,おそらく抵抗感があったことと思います。でも「今のはダメ」「今のは良し」といったしつこい評価に耐えながらもチャレンジを繰り返し,自分たちの音が変わっていくことを自覚してくれたようでした。自分を変えていくことを怖がらずアドバイスを素直に受入れ,より良くなっていこうという意欲に溢れる10名でした。

 全日本合唱コンクール岩手県大会の高等学校部門は来週末の8月29日(土)です。出演順や時間も決まり,全22団体中宮古高校音楽部は17番目のようです。私の出番より前なので聴くことは叶わないと思いますが,良い音楽を,そしてそれを目指す姿を聴き手に届けて欲しいと思います。お時間のある方はトーサイクラシックホール岩手(岩手県民会館)大ホールに足をお運びになり,若者たちの音楽を聴きにいらしてください!!

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