2024年10月28日月曜日

【合唱研】宗教曲の歌詞はどこから?

  今季取り組んでいるJ. ラター作曲の『FOUR ACCOMPANIED ANTHEMS』は4つの楽曲からなっています。これら宗教曲の英語の歌詞はどこから採られているのでしょうか?

 楽譜の各曲の冒頭にヒントがあります。

 まず先日胆江合唱祭で発表した《ALL THINGS BRIGHT AND BEAUTIFUL》ですが,p. 6に「Word by Mrs C. F. Alexander(1823-93)」とあります。アイルランド系イギリス人の賛美歌作家で詩人のアレキサンダーさんによるものとわかります。1848年に彼女の『小さな子供たちのための賛美歌』で初めて出版されたそうです。
 次に《FOR THE BEAUTY OF THE EARTH》は,p. 12に「Word by F. S. Pierpoint(1835-1917)」とあります。ピアポイントさんも讃美歌作家で詩人だそうで,この詩は最も有名なものの一つだそうです。
 続いて《LOOK AT THE WORLD》ですが,p. 31に「Words and music by JOHN RUTTER」とあります。この曲はイングランド田園保護評議会からの委嘱に応えて作曲したそうです。

 と,ここまでは出自が比較的明確なものです。問題は,歌詞の少ない《I WILL SING WITH THE SPIRIT》です。p. 23には「I Corinthians 14. v. 15」とあります。「コリントの使徒への手紙1の第14章第15節」という意味です。歌詞は「I will sing with the spirit; alleluia. And I will sing with the understanding also; alleluia」だけです。そこで聖書(共同訳聖書実行委員会『聖書 新共同訳』日本聖書協会発行1993)にあたってみました。すると次のように載っていました。

15 では,どうしたらよいのでしょうか。霊で祈り,理性でも祈ることにしましょう。霊で賛美し,理性でも賛美することにしましょう。」(p.(新)318)

 ここには「sing」にあたる言葉は出てきませんね。違うところに元のテキストがあるのでしょうか?そこで手元にあった英語版の聖書(AMERICAN BIBLE SOCIETY"GOOD NEWS BIBLE TODAY'S ENGLISH VERSION"1992)にあたってみました。すると「 1 corinthians 14」のpp.1383-1384に次のようにありました。

15 What should I do, then? I will pray with my spirit. but I will pray also with my mind; I will sing with my spirit, but I will sing also with my mind.」
 近づきましたね。歌詞の文言そのままではありませんが意味的にはほぼ同じ(ように私には思えます)。「sing」ってのは「歌う」ことですが,それは同時に「賛美する」ことなのでしょうね。

 ついでにこれまた手元にあるドイツ語の聖書(「DIE BIBEL NACH DER ÜBERSETZUNG MARTIN LUTHERS」DEUTSCHE BIBELGESELLSCHAFT STUTTGART刊)ではどうなっているのか調べてみました。すると「1. KORINTHER 14」のp. 208に次のようにありました。


15 Wie soll es denn nun sein? Ich will beten mit dem Geist und will auch beten mit dem Verstand; ich will Psalmen singen mit dem Geist und will auch Psalmen singen mit dem Verstand.」
 なるほど,「singen」はただ歌うのではなく「Psalmen」つまり旧約聖書にある「詩篇」の詩を歌うこと,つまり神を賛美する歌という意味なのですね。

 ちなみにコリントの使徒への手紙1の第14章とは「異言と預言」と題されていて,「2 異言を語る者は,人に向かってではなく,神に向かって語っています。それはだれにもわかりません。」「3 しかし,予言する者は,人に向かって語っているので,人を造り上げ,励まし,慰めます。」「13 だから,異言を語る者は,それを解釈できるように祈りなさい。14 わたしが異言で祈る場合,それはわたしの霊が祈っているのですが,理性は実を結びません。」とあるのに続いて「15 では,どうしたらよいのでしょうか…」となります。

 宗教曲の歌詞は,日本語としても難しいのですが,それは外国語からの翻訳であるためでもあり,宗教的な意味の難しさもあるのだと思います。信者でない私たちが歌うにあたっては,全て理解し納得して歌うことは難しいにしても,他の世俗的な楽曲同様,テキストの内容を可能な限りより深く理解しようとする姿勢をもつことが大切だと思っています。

2024年10月27日日曜日

【演奏会・聴いてきました】石田組結成10周年ツアー

 


 10月27日(日)の午後,奥州市文化会館Zホールの大ホールに「石田組 結成10周年ツアー」を聴きに行ってきました。ここのところZホールではステージに立つことの方が多く,聴き手としてホールに行くことはほとんどなかったので,驚いたのは駐車場の混みようでした。開演の40分くらい前に行ったにもかかわらず停める場所がなくなるのではないかと思うくらいの車の行列でした。

 1500の客席はほぼ満席でした。「石田組」と書いている黒いTシャツを着ている方も多く,「推し」とか「追っかけ」とかいうタイプの方々のようでした。会話を聞いていると東京方面から来た方も多かったようです。もちろんいつも奥州市で一緒に合唱を楽しんでいる方々の姿もたくさんみられました!

 「I列27番」という正面の近めの席で聴くことができました。計13名の弦楽器奏者の男たち!「石田組」っぽさを石田さんが頑張って出している感が強く,他のメンバーはとてもおとなしそう(?)な見た目でした。でも皆さんほとんどが一流オケのトップ演奏者なんです!

 で,前半はシベリウス「アンダンテ・フェスティーヴォ」,グリーグ「2つの悲しき旋律」,グリーグ「ホルンベルク組曲」と,精緻で息がぴったりと合った弦楽合奏を聴くことができました。フィンランドやノルウェーといった北欧らしい(?)旋律とハーモニーでした。先日聞きに行ってきたブロムシュテットのN響から北欧づいています!グリーグの「2つの悲しき旋律」の「II.過ぎた春」が鳴り出して「知ってる!」って思ったら,かつて宮古木曜会合唱団の定期演奏会で演奏した《Der Frühling》(過ぎにし春)でした!素敵な旋律,久しぶりに耳にしました。

 後半の最初はバルトーク《ルーマニア民俗舞曲》のエネルギッシュな音楽で始まり,映画音楽やロックなど弦楽器のみながら力強い音楽,そしてグルーヴを共有して楽しんでいる感じの音楽が演奏されました(詳しくは写真をご覧ください)。主旋律を弾く組長石田さんの音は合奏から伸びて飛び出てくるような音色でした。

 アンコールは揃いのTシャツに着替えて3曲,クイーンの《ボーン・トゥ・ラヴ・ユー》,いきものがかりの《ありがとう》,オアシスの《ホワットエヴァー》でした。

 ステージ進行や雰囲気づくりもさすが「エンタメ」って感じでしたが,弦楽器のみのアンサンブルであんなにも多彩な表現ができることに驚きました。これなら「ライヴ」を求めて遠くからでも聴きに来たくなるだろうなぁと思いました。こんな企画がたくさんあると奥州市にも人が集まってくるでしょうね。そして,自分もエネルギーが溢れ伝わってくる音楽表現を目指したいものだと思いました。

【盛岡某高音楽部】合唱曲の楽譜購入

 

 10月25日(金),翌日に横浜市で行われる予定の孫の運動会に合わせて上京し,銀座のYMHにて久しぶりに合唱曲の楽譜を物色しました。最近はPNMSCとかACDMA等のウェブサイトで購入することが多かったのですが,今回は盛岡某高音楽部で使うための資料として「無伴奏・女声・3声部程度・比較的簡易」という条件があったので実際に譜面を見ながら選びたいと思い,銀座まで足を伸ばしました。

 音楽之友社とかKAWAIから出されている女声合唱のシリーズをほとんど全部開いて眺めてみること1時間半,結局5冊(1冊は混声のもの)購入しました。若かりし頃「楽譜とCD(レコード)は見つけた時に買え」と師から教えられて以来,「いずれ資料として役立つはず!」と言い訳しながら気になるものはバンバン買ってきました。確かに資料となり財産となったのですが,現在は収入がなくなってしまったので,どれを買おうか(どれの購入を我慢しようか)悩みに悩んで時間がかかってしまいました。

 盛岡某高音楽部はここのところ部員たちが某曲集から選んだ3つのルネサンスのア・カペラ合唱曲に取り組んでいます。夏の全日本合唱コンクールの際は日本語の合唱曲を伸び伸びと表現した子どもたちなので,この先日本語の良い作品にも並行して取組んでいきたいと思っています。彼女らはどの楽曲を選ぶか,どんな観点で選ぶか,楽しみです!でもその前に私がよく勉強しておかなくちゃ!

2024年10月21日月曜日

第31回胆江合唱祭・本番終了!!

 

 10月20日(日)の午後,第31回胆江合唱祭が行われました。昨年度(第30回)は胆沢文化創造センターでしたが,今回は,今年度で閉鎖になる江刺の中心的な体育文化会館のささらホール(11月17日にはこんな素敵なコンサートも予定されています!)でした。全部で14団体(水沢6,江刺4,前沢1,胆沢1,金ケ崎2)が出場しました。ほとんどの合唱団は個別の「演奏会」を行っていないので,この合唱祭が1年間の主な発表の場となっているようです。

 今回は昨年同様2団体と最後の「15 合同演奏」を指揮しました。

 プログラム10番のアンサンブル・コンフオーコは今シーズン6回レッスンを重ねてきました。長い間しっかりと活動している団体なので,毎回の課題を少しずつクリアしながら音楽を高めてきたと思います。本番では,日本語の曲がとてもよい音楽になっていたと思います(指揮を終えて振り返る前に拍手が来ましたね!)。特に,しなやかな息遣いができるようになった点は今後他の楽曲の演奏にも生かしていって欲しい点です。

 プログラム14番の合唱音楽研究会奥州は,英語の教会音楽とルネサンスのア・カペラ合唱曲にチャレンジしました。毎回さまざまな課題(特に前回は自分の耳の悪さを痛感させられました)があり,私がたくさん学ばせてもらいました。今回,パレストリーナのミサ曲は立ち位置について,前々回あたりからやっている「シャッフル」をして臨みました。「本番もシャッフルするんですか?」という驚きの声もありました。自信がないことからの発言のようでした。パートのメンバーがまとまって立っていると,同じ旋律が近くから聞こえてくるので安心して歌えるのは事実です。でもその分,自分の音楽をモニターしたり評価したり,あるいは集中してチャレンジしたりする精度が下がること(言い換えると「無責任に声を出すこと」)が多いものです。加えて合唱音楽研究会は「合唱団ではなく研究会」なので,より良い音楽を目指して様々な方法にチャレンジしていくことが基本です。そうやって取り組んだ成果が,ピッチの下がりがほとんどなく演奏し切れたことに現れていたのだと思います。

 最後のプログラム15番は合同演奏《大地讃頌》でした。午前のリハーサルは10分間だけだったのですが,歌い手の皆さんは指揮からよく感じ取ってくださって,(大地讃頌の演奏にありがちな「元気者大会」にならず)心を込めた良い歌声を会場に響かせてくださったと思いました(「お客様もご一緒に」のアナウンスは想定外で驚きましたが…)。

 これまで30年以上続いてきた胆江地区の合唱祭。今回の合唱祭そして今後の活動が,先輩方が育んできた文化を引き継ぎ深化・発展させていく一助になればと思っています。皆様,ご協力ありがとうございました。またご来場くださった皆様,ありがとうございました。ご感想などいただけると今後の励みになります。よろしくお願いします。

 ちなみに,アンサンブル・コンフオーコとは一度離れますが,合唱音楽研究会奥州はこの後,パレストリーナのミサ曲(F-Dur)の全曲とラターの賛美歌の残り2曲を学んでいって,3月か4月あたりに第2回の研究発表会を開催できたらと考えています。皆様どうぞお気軽にご参加ください。

2024年10月19日土曜日

【合唱研第30回:活動報告】耳の悪さ…

  10月19日(土),午前中,かつて9年間勤めた職場の学習発表会で子どもたちの成長の様子を楽しみ,その午後,合唱音楽研究会奥州の30回目となる活動に取り組みました。場所は日本基督教団水沢教会です。

 開始予定の14:00少し前に会場に着いたら,すでに練習が始まっていました。自主練習です。全回苦戦したパレストリーナの《Kyrie》が玄関前まで聞こえてきました。とても嬉しく思いました。自分たちで必要性を感じて自分たちでなんとかより良くしようと行動に移せる人たちだということですから!もともとそのような方々なのかも知れませんが,合唱音楽研究会奥州の活動に取り組む中でそのような考え方が強まったとすれば,活動してきた成果の一つと思えるからです。

 翌日の胆江合唱祭で演奏する曲は3曲。その内2曲はJ. ラターの賛美歌ですが,こちらはだいぶ慣れてきていたように思います…少々歌いすぎ・母音出しすぎではありました。

 問題は無伴奏のルネッサンス音楽,パレストリーナの《Kyrie》です。前回は何度やってもピッチが下がりまくりで,様々な手立てを講じてみたもののどうにもならず完敗したのでした。「今回はどうやったらいいか…」と考えていました。じつは今週盛岡バッハ・カンタータ・フェラインでは2回のパート練習を行ったのですが,その際,響きが安易に落ちる傾向をパートリーダーに指摘されました。そこで自分の耳にもその傾向があると思って集中して聞くと,声の響きのポイント,ピッチ,音色などの聞き取りに甘さがあったことがわかりました。そこで響きが落ちる(意図せず変わってしまう)ポイントを細かく丁寧に指摘して改善を試みたところ,全体のピッチの下がりも改善してきました。私の耳の悪さが原因でした。それにしても会員の皆さんの「向上的変容」には驚きました!

 胆江合唱祭は私たちの活動を演奏を通して地域の皆さんに知っていただける貴重な機会です。少しでも良い演奏をして,良い音楽を届けたいと思います。江刺のささらホールで13:00からです!!

2024年10月17日木曜日

【出前講座②③】「変わった!」かな?

  出前講座の(1回目は9月11日でした)2回目と3回目に行ってきました。

 2回目となったのは10月16日(水)の午前中,金ヶ崎町の某小学校でした。初めて金ケ崎駅で降りて小雨の中歩いて行ったのですが,金ケ崎駅の立派なこと!財力のある自治体は違いますね。駅舎でコンサートもやるそうですから!

 4年生2学級の合同の学年音楽(60分)で,翌週に予定されている連合音楽会と学習発表会で歌う《エール!!》(美鈴こゆき作詞・作曲)を使っての学習でした(体育館)。「声が大きいけれど怒鳴り声で…」と担当の先生がおっしゃっていた通り!そこで皆で歌える歌を考えてもらって《翼をください》を歌ってみることにしました。というのも《エール!!》のようなテンポが早く弾む音楽では発声について考えたりチャレンジしたりすることは難しいからです。例によって《翼をください》の調を上げていって,高い音が苦しくなったところで頭声的に出して声が伸びている児童を取り上げてお手本にさせながら調を下げていく方法で声質の変化を求めました。十分ではなかったものの全体的に変化が出てきた感じだったので,《エール!!》に切り替えて歌ってみました。「だれかを元気付ける歌だ」と歌詞内容を振り返らせながら歌っていると,児童から「優しい声になった」との言葉が出たので,キーワードを「優しい声」にしてイメージさせていきました。終了後,聞いていた大人からは「1時間で大きく変わって,歌詞の内容も聞き取れるようになった」と評価されましたが,自分としては今回は十分には変えきれなかったと感じています。


 3回目となったのは翌日の10月17日(木)の午後,宮古市の某小学校でした。午後の5校時(45分)は3年生23名と4年生30名の合同合唱,6校時(45分)は5年生25名と6年生27名の合同合唱でした。

 3,4年生は《しあわせになあれ》(弓削田健介作詞・作曲)と《今日から明日へ》(中里幸弘作詞作曲)でした。最初に通して聞かせてもらって驚いたのは,3,4年生ながら喉がよく開いた頭声的に響いた声で歌っていること,そして「喉のパイプを太く保って…」などの用語を使えることでした。とてもきれいなハーモニーができている部分があったので,そこを取り上げながら,うまくハモれていないところの音を確かめて「しあわせになぁれ〜」と丁寧に祈らせたら・・・とても素敵な合唱になりました。

 5,6年生は《歌が息をする》(渡瀬昌治作詞,高橋晴美作曲)でした。こちらも声についてはほとんど問題ありません!高学年らしく(?)サンバのリズムへの乗りが悪かったので,リズムマシーンで16ビートのサンバのリズムを聞かせたり体でリズムに乗って動いてみたりさせながら歌わせたら,表情がどんどんほぐれ,声も明るくなっていきました。

 聞いていた大人の方は終わってから「1時間でこんなに変わるなんて驚きました」と評価してくれました。中には「教育を感じました」と言っていた方もいました。「指示してやらせる」のではなく「その気にさせて引き出す」ことを指していってくださったように思いました。


 小学生の音楽指導は楽しいものです。音楽も表情もどんどん変わっていきます。素直なので真似するのが上手です。今年は「出前講座」はこれで終わりですが,来年もいろいろな機会があったらいいなと思っています!関係者の方,ぜひ申請して使ってください!

【アンサンブル・コンフオーコ】⑥積み重ねの成果

  10月16日(水)(この日は隣町の小学校で指導の後,Zホールで次の合唱ステージについての打ち合わせを行い,その)夜にアンサンブル・コンフオーコの今シーズン6回目となるレッスンをしてきました。10月22日(日)の胆江合唱祭にむけた最後の練習でした。今シーズンは計6回,特に4,5,6回目は毎週続いた設定となり,毎回の成果が次につながる感じがありました

 音符歌いからの脱却響きの空間(楽器の形)を音域や母音で変えないこと聴き合ってピッチをそろえること他パートとの音程を正確に表現することなど,様々な課題を少しずつクリアして地力をつけてきた感じです。今後はぜひこの力を他の曲にも生かしながらより高めて欲しいものです。

 奥州市で音楽に真摯に向き合ってきたアンサンブル・コンフオーコも胆江合唱祭で発表します。ぜひ聴きにいらしてください。奥州市江刺のささらホール(まもなく閉館になります)が会場です。10月22日(日)の午後です。

2024年10月13日日曜日

【合唱研第29回:活動報告】音楽表現を自分ごとにするために

  10月12日(土)の午後,日本基督教団水沢教会で合唱音楽研究会奥州の第29回の活動を行いました。連休初日,秋晴れの清々しい午後でしたが,多くの方が来てくれました。ありがとうございました。

 前回は他のパートを聴き取りやすくするためにいろいろな方法にチャレンジしてみたのでしたが,今回もアンサンブルが大きな課題でした。というのも他者を気遣いながら音楽することがなかなかできない状態だったのです。初めに取り組んだパレストリーナの《Kyrie》。音程が合わない,テンポが合わない,息づかいが合わない…。

 各パートが合わさって全体でつくる合唱音楽ですが,ともすると「自分のパートをちゃんと歌っていればそれでいい」という狭い責任意識で参加してしまうものです。ポリフォニーでは特に自分のパートだけに意識が入ってしまって,全体でどんな音楽にしたいのかという音楽の全体が見えなくなってしまっていました。

 そこでまず,(指揮をしないで)聴き合って音楽を作ることにチャレンジしました。最低限,拍の共有や調性の共有が必要です。しかしこれがなかなかできない!自分の都合を優先してしまう傾向の方々が多くいらっしゃるようでした。

 さらにパートを聴きやすくするために前回やった立ち位置の「シャッフル」もやってみました。すると少し足並みが揃うようになってきました。しかしそれでも,息がなくなったり難しい旋律になると先に行ってしまう人やパートがなかなか修正されませんでした。

 さらに大変だったのはピッチの下がりです。相対的には大きな破綻なく進むのですが,歌い終わる頃には半音から全音ほども下がってしまいます。やはり音程・音高に対するシビアさが足りないのですね。感覚の問題,聴覚や認知の問題,発声の問題などいろいろな観点から課題を見出し,より正確な音高で音楽できるようにしていくことが,私たちの大きな課題であると認識できました。10月20日(日)の胆江合唱祭本番まであと1回,よりよい表現を目指すことで力がつくのだと思います。共に頑張りましょう!

【演奏会・聴いてきました】HNK交響楽団 第2019回定期演奏会

 
 10月11日(金)の夜,東京にあるサントリーホールにN響の第2019回定期演奏会を聴きに行ってきました。サントリーホールはかつて2回ほどステージで歌ったことがありましたが,東京駅とのつながりがよくわからず(特に地下鉄丸の内線の国会議事堂前駅を降りてからの地下通路!),帰りのことも考え道順を確かめながらたどり着きました。

 この日のプログラムのテーマは北欧。指揮者のヘルベルト・ブロムシュテットさんならではの選曲でした。
シベリウス作曲 交響詩「4つの伝説」作品22から《トゥオネラの白鳥》
ニルセン作曲 クラリネット協奏曲作品57(クラリネット:伊藤圭)
ベルワルド作曲 交響曲第4番変ホ長調《ナイーヴ》

 どの曲も初めて聴く曲でした。シベリウスの交響詩は情景が見えるような音楽でした。ニルセンのコンチェルトは超絶技巧で,調性はあまり感じられない作品でしたがソロ楽器とオケとの音楽のやりとりがよくわかる感じでした。ベルワルドは意外にわかりやすい交響曲でした。

 97歳のブロムシュテットさんはコンマスの郷古さんに付き添われてゆっくりと登場し,指揮台に置かれた椅子に腰掛けて指揮をしていました。音楽の細部までほとんどが頭に入っていて,小さいジェスチャーながら各楽器が的確に引き出されていました。来年のこの時期にも来日予定とのこと。なんとかお元気で実現してほしい,聴きに行きたいと思いました。

 N響を生で聴くのはこの日が初めてでした。ソロが音楽的なのはもちろんですが,各セクション,特に弦楽器などはまるで一つの楽器のように聴こえてきました。パート練習の大切さ,パートが一つにまとまって全体の「パーツ」となってアンサンブルすることの効果がとてもよくわかりました。

 それにしても響きの良いホールでした。前から4番目の席でステージの後方の楽器は見えませんでしたが,音はしっかりと届いて聴こえてきていました。しょっちゅう行ける距離に住んでいる人が羨ましい限りです!

2024年10月9日水曜日

【アンサンブル・コンフオーコ】⑤音符歌いからの脱却

 
 10月9日(水)の夜,女性合唱団アンサンブル・コンフオーコの練習に行ってきました。前回はフォーレの《Kyrie》と格闘したので,今回は残した課題をなんとか解決したいと思っていきました。

 発声練習では息の吸い方について質問が出ました。質問がでる取り組み方って素晴らしいですね。課題意識が明確でそれを解決しようという強い意欲が「質問する」という行動を支えているのですから!「息を送るためには息を吸わなくちゃいけない。どのタイミングで吸うのですか?」という質問でした。私の回答は「息は「吸わない」。入ってくる。」でした。息を送る・息を吐くためにお腹を絞りますが,絞るのをやめれば腹斜筋が緩んで息が止まるだけでなく,(張っていた)横隔膜が下がって息が「入ってくる」って感じであることをお伝えしました。理屈では分かってくれたと思うのですが…胸で呼吸していると,この感じはなかなか掴めないんですよね。前回同様「どうなればいいか」の方向だけは示せたと思います。

 初めは,前回駆け足で終わってしまった《ほらね,》の後半から。「助詞はいらない」とか「一筆書き」とかいったことはだいぶ身についてきていました。音域が高くなると喉を狭めて音を出そうとするし,音域が低くなると少しの息で楽に歌おうとするので,「楽器の形を変えないで,息をしっかり送って楽器を鳴らす」ことに取組みました。

 次に《Kyrie》。一度聴かせてもらったのですが,どうにも魅力的ではありませんでした。そこで「この曲の魅力はなにだと思いますか?」と投げかけてみました。その楽曲なりの良さを理解してそれを表現しようとする意識がないと,ただ音を出して合わせているだけで聞き手にはつまらないものになってしまいます。私は《Kyrie》は和音の多彩さだと捉えていることを伝え,その時々の和音を聴き合って響き合わせることと次の和音を予感しながら(予感させながら)音楽の歩みを進めていくことに取組んでみました。(前述した発声法上の問題もソプラノには多々ありましたが。)

 そして《永遠の花》。これは息の流れも母音の響きもとてもレガートに歌えていました。

 最後に,胆江合唱祭の合同演奏の曲である《大地讃頌》を初めて練習しました。歌ったことのない方は二十数名中2名だけというほどよく歌われている楽曲で,暗譜している方もたくさんいらっしゃいました。「歌い慣れている」感じが伝わってきました=新鮮さがほとんどありませんでした。旋律,言葉,和声など楽曲のもつ素敵な点がたくさんあるのですが,聞こえてくる歌声には「音はあるのに音楽がない」状態(《大地讃頌》で非常によくあるパターン)でした。そこで歌詞をきっかけにして各フレーズの歌い方を吟味してみました。(時間切れで,次回再チャレンジすることにしました。)

 今シーズン5回目となった今回もたくさん学ばせてもらいました。1週間後の水曜日の練習を経て10月20日(日)に本番を迎えます。合唱団の力を少しでも引き出して,聴き手も歌い手も表現を楽しめるステージにする,そして今シーズンに学んだことが今後の合唱団の力となって残るようにがんばりたいと思います。みなさん,ぜひ聴きにいらしてください!

2024年10月6日日曜日

【宮古木曜会合唱団】訓練の成果?!

  10月6日(日)宮古市の磯鶏幼稚園のホールで宮古木曜会合唱団の練習をしました。前回は木曜日夜の通常練習の2時間だけでしたが,日曜日の強化練習は13:00〜17:00のなんと4時間もやれました!ここのホールはとてもよい響き(同じ場所での前回の強化練習の様子はこちら)なので,歌うのも聴くのもストレスが少なくて済むのです。

◯発声練習
・喉頭の位置を感じることで響きの空間を広げるイメージをもってもらいました。
・会場の響きに任せて音を出せたので,柔らかい音になりました。
◯Victoria「Taedet animam meam」
・発声練習の柔らかい「音」のままで歌いました。
・長三和音,短三和音の違いが不明瞭(あるいは違いはわかるが表現できない?)な方もいたので,8度,5度,長3度,短3度の響きを,結構な時間をかけて確かめました。(これで耳が働きやすくなったようで,この後の練習がスムーズになりました。)
・「入れ歯を外したよう」に歌詞を入れて歌ったら,とても良い響きでした。あとはラテン語のアクセントや抑揚に合わせて息を送ってしゃべり慣れることが課題です。
◯Paul Peuerl「O Musica」
・以前より短時間で思い出すことができました。前回に強調した「訓練の成果」かもしれませんね。
・語感を活かした歌い方を目指しました。
◯Mozart「Missa in C」KV 220
・いよいよ「Credo」に取り組みました。3日前の木曜日の通常練習でさらってもらっていたおかげで,音はすんなりと思い出して歌えていました。これこそ「訓練の成果」ですね。
・歌詞の意味や発音を確かめて,少し遅めのテンポで歌詞唱しました。
・続けて「Sanctus」「(Benedictusの後半の)Osanna」「Agnus Dei」「Kyrie」「Gloria」と全体を歌詞をつけて歌いました。

 この合唱団の良いところは,ピアノ伴奏なしでもきちんと音楽しようとする・できるというところです。この日はモーツァルトのミサのほぼ全体をピアノ伴奏全くなしのまま歌い切りましたから!地力が高まってきたといえるでしょう。またこの日は某パートが一人もいませんでしたので3パートでの合わせ練習となりました。歌う方も聴く方も声部が少なく整理されやすかったので,不具合の改善が早まりました!(でも,そのパートのメンバーが次回の練習で足を引っ張らずに音楽してくれるかというと…)

 10月20日(日)には宮古市民文化会館で行われる宮古市民文化祭での発表があるとのことで,10月17日(木)の通常練習でのレッスンはなしにしました。私は胆江合唱祭と重なったので聴くことはできませんが,よい演奏になり入団希望者が出現しますよう願っています。がんばってね!

2024年10月2日水曜日

【アンサンブル・コンフオーコ】④日本語はレガートでした

 


 10月2日(水)(「もりおかトーフの日」らしい)の夜,アンサンブル・コンフオーコの4回目のレッスンに行ってきました。前回は2週間前。その後自分たちでの練習が1回あり,先日の日曜日には練習会場としている交流施設アスピア主催のアスピア祭への出場(3曲ほど歌ったとのこと)あり,と活動していたようでした。

 発声練習では喉頭の動きについて説明し,どうなれば咽頭部分の容積が大きくなるかについて,筋肉の動きを体感してもらいました。随意的に動かすのが難しい筋肉群なので,「どうなればいいか」というゴールを体感してもらうことで各自の練習の目標としてもらうためでした。

 初めにフォーレの"Kyrie"。ソプラノは音域によって発声の仕方を変えようとするので,その「癖」との戦いでした。喉の力みによって音量を増し同時に「自分の声に響きがついている」と自己満足するその「癖」を取り去らなければ,各自が本来持っている豊かな響きやそれによってパートが一つにまとまることが実現できません。どこまで許容するか,どこから改善を要求するか,とても難しい判断にいつも迫られます。

 メゾやアルトは低音域のため息を十分に流して音を出すことを手抜きし,身体をあまり使わずに歌っていました。これではハモるための響き(倍音)の豊かな音が出ないし,音楽も痩せ細ってしまいます。四部音符を十六分音符4つに分解することで息の流れを意識させて腹を使うなど,身体を使って音楽することを習慣づけました。

 次にラターの「永遠の花」。冒頭からのユニゾンは,音程の跳躍が大きいにもかかわらずレガートにつないで歌っていました。先週だいぶ練習したのか,あるいは自分たちの発表を録音して聴き直すことで課題(「音符歌い」や「一筆書きでない」)を自覚したのかわかりませんが,とてもよい音楽の雰囲気でした。

 最後にまつしたこうの「ほらね,」。これも丁寧にレガートで歌われていました。「U」の母音の浅さも改善されていました。助詞が重くなるのが少し気になったので修正したくらいでした。

 地元で普段指導している方(コンフオーコの場合はOMさん)がよく学んでくださっていると良い音楽に早く近づけるなぁ,とあらためて感じました。OMさんいつもありがとうございます!あと2週通って3回連続お稽古し,10月20日(日)胆沢文化創造センターで本番です。楽しみです。お時間のある方はぜひ聴きにいらしてください。ちなみに今年私はアンサンブル・コンフオーコ,合唱音楽研究会奥州と全体合唱の3つを指揮する予定です!

【盛岡某高音楽部】歌いぞめ!

 1月6日(月)盛岡某高音楽部の今年最初の部活動に行って来ました。冬休み中なので午前中です。 まだ部活動を開始しているところは少ないようで,外にも体育館にも運動している高校生の姿はほとんど見えませんでした。音楽室に行くと,昨年暮れにインフルエンザの流行により残念ながら中止となった...