先日(2/28),小学5年生90名ほどを相手に,二部合唱の指導をしました(実質30分間)。学年の担任団は「主旋律は覚えた。副旋律も覚えた。でも合わせるとつられてしまって合唱にならない。」との課題を感じていました。楽曲は栂野知子作詞・作曲の『明日へつなぐもの』。ユニゾンで歌い出し,サビに入るところから3度音程でほぼ並行して動き,コーダの部分は独立した旋律の「掛け合い」構造になっています。
授業が始まり,子どもたちと担任団とで今の課題を話し合いながら本時の課題「声の出し方と釣られないで歌う方法を学ぼう」にまとめてバトンタッチされました。
まず聞かせてもらうと,次の3つを感じました。
①フレーズが短く,その終わりで音楽の張りもなくなる。
②二部になるべきところの音楽がもやもやしている。歌えていない。
③でも,コーダ部分の「掛け合い」の二部合唱はいい感じ!
そこで,まず,「掛け合い」はできるのに「並行して動く」ところの音が取れず曖昧になってしまうのはなぜか,考えました。「掛け合い」は旋律(音高)のみならず歌詞もリズムも違う2つの旋律から成っているから違いがわかりやすい。一方「並行して動く」ところは歌詞もリズムも同じで音高だけが違います。つまり彼らはリズムの違いは認識しやすいけれど,音高の違いを認識するのは不得手ということ。そのことを伝えると「なるほど〜」といった反応でした。そこで,音の高さを手の位置(高さ)に置き換えて音高を視覚化してみました。ユニゾンから二部合唱に分かれるところ(②のところ)の音高は,主旋律は「ソ→レ(上)→ド(上)ー」と5度上がって2度下がる旋律。一方副旋律は「ソ→ミ→ラー」と3度下がって4度上がる旋律。この動きを手の高さを変えながら歌わせました。それまでの学習で階名称をしたり音の高さを空間的な高さとして捉えたりすることが十分でなかったのか,なかなかうまく捉えられない子どもも結構いました。『風船の階名』を授業のときにいつも張り出しておくだけで違ってくると思うのですがね。
感覚として掴めてきたであろうころに,次の問題に取り組みました。それは①のことです。息を十分に吸って,それを十分に使って声を出していないので,声量が少なく声の張りもないのです。そこで次のように伝えました。「歌うと言うことは『運動』なのです」と。すると「え?」という反応!食いついてくれました!あとは簡単に腹や喉の筋肉を使う様子を見せて真似させて歌わせました(ユニゾン部分)。音域が低い(B-dur)ので,少しずつ上げて(移調して)伴奏を弾き(C-dur, D-dur, F-dur),高い音を出させました(そしてまた戻っていく)。こうなると体を使わないわけにはいきませんからね。加えて,フレーズが短く歌詞の「単語」ごとの歌い方になっているので,文として歌うことを要求し何度か歌わせて音を保つことにも慣れさせていきました。
声に張りがでてきたところで,そのまま二部合唱の部分に入っていくと…2つの音が重なって響き合うではありませんか!素敵な二部合唱になってきました。
「それぞれがしっかりと歌って主張しないと,二部合唱のような響き合いは作れないんだよ。自信がないからといって声を出さずにモニャモニャしていると強いところに引っ張られて行っちゃう。これは実は歌だけでなく,他の学習や生活の場面でも同じこと。主張し合うことで響き合える。主張しないでいると自分の考えと違う方に引っ張られて巻き込まれてしまって,やりたくないと思っていてもやっちゃったりすることになるんだ。」と話しました。
30分ほどの学習時間はあっという間に過ぎましたが,子どもたちが「自分たちの声が出るようになった!」「二部合唱に聞こえた!」と実感して終えることができました。放課後になって担当していた先生と学習会(反省会)をしたら,「自分も声がでるようになって驚いた」と言ってくれました。自分が変わったことを喜んでもらえるのが嬉しいんです!また機会をくださいね。