2023年12月1日金曜日

日本声楽発声学会 2023年度「第133回例会」 in 東京藝術大学

 


 11月26日(日),6:10盛岡駅発の(いつも通勤で使う)新幹線に乗って,日本声楽発声学会第133回例会に行ってきました。上野の東京藝術大学です。

 まずは3つの研究発表でした。①声楽家の豊田喜代美さんによる「柴田睦陸と声楽発声」。日本の声楽界を理論面でリードし多くの声楽家を育て影響を与えた先輩について,足跡を追いながら理論を明らかにしていく端緒となる発表でした。②耳鼻咽喉科医師の斉田晴仁さんの「体壁振動からの声区の考え方について」。「声は影!」と位置づけ,音響学で一般的な「音源フィルター理論」を念頭に,声の本体の音質を形成する要素に分けて捉える見方を教えていただきました。③声楽家の梅村憲子さんと工学博士の森幹男さんによる「日本語歌唱時における母音の明瞭性について」。テーマとはちょっと距離のある内容のように思いましたが,研究の動機や母音の明瞭性を可視化するソフトウエアの開発など,興味深い発表でした。

 午後は2時間にわたる特別公演。京都の耳鼻咽喉科医師である廣芝新也さんによる「声を直すことは心を治すことー音声外科と美しい医療ー」というテーマの講義でした。声帯に直接触れることなく声帯の病気を治そうと,甲状軟骨や輪状軟骨に手を加える手術について,動画をたくさん用いながら解説していただきました。「人の声って実に物理的に発音・構音されているんだなぁ」とか「自分の声はアイデンティティを示す顔のようなものなのに,こんなに変わってしまうんだなぁ」とか(もちろん「痛そうだな」とか)思いながら,本当に貴重なお話を聞かせていただきました。「美しい医療」という言葉に惹かれました。

 その後,第1ホールというところに場所を移して,現役声楽家の演奏とお話の時間。オペラも歌いミュージカルも歌うという佐橋美起さん(武蔵野音大の教授)による英語の様々な歌を1時間にわたって聴くことができました。ミュージカルの際はマイクを付けるのでそれを意識した発声をするとのことでした。いずれの曲でも,役になり切って,あるいは歌詞の世界に入り込んで,体全体で表現していました。

 この学会は,ともすると感覚的に処理したり指導したりしがちな声楽を,科学的に分析しようということで,声楽家と医師と工学系の技術者と様々な方が関わって学び合っています。ですから普通に音楽活動をしているだけでは知り得ない事柄を知れたり,得られない視点を得ることができる楽しさがあります。知ることによって見えてきます。合唱指導をしていてもいろいろなことが見えてくるので,より良くするための引き出しが増えるわけです。私自身は専門家ではありませんが,今後も参加することでたくさん学び,皆さんに伝え広めていければいいなと思っています。

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